白衣の天使

 なるほど、確かに不審者に見えるかもしれない。
 日が照っている中で草刈りや、草抜きや、焼却などをすると、山10分が限界で、のどが渇き脱力感に襲われ、危ないなと警戒モードに入る。そしてすぐさま冷房が効いたところに退避する。これを夏中繰り返している。多少の慣れはあるが、それでもたかだか1分長く作業を続けられるくらいのものだろう。
 服装にその原因があることは分かっていた。バレーボールをしていた頃にチームで買ったジャージの上下を身に着けてドッグランに行くのだが、ジャージはどちらかと言うと冬用だ。分厚くて強い。4着あるすべてのジャージは、50年近く前のものばかりだ。ズボンはレシーブの時に膝を床に当てて破るので、いくつも新しいものに変えたが、上着は全然劣化しない。だから永久に使えそうで、もったいないからドッグランの作業のときに着るようにしている。
 汚れるから、長袖で蚊に刺されるのを防げるから、もったいなくて捨てられないから、何とか利用したいから、このような理由を満たすのだが、最近気が付いたことがあり、そのことでジャージをドッグランで着ることは止めた。
 と言うのは暑くなってから、やたら蜂が耳元を例の羽音を立てて通り過ぎるのだ。まるで威嚇しているように何度も近寄っては飛び去る。ある日、後ずさりする僕をまさに威嚇しているがごとく、真正面から飛び去らずに、にらみ合い状態が続いた。以来黒い服はやはり避けようと思い、蜂が攻撃対象にしない白色の服に変えようと思った。
 そこで思いついたのが、幾枚かの捨てるに捨てられずとっておいた白衣だ。着古しているから、肌触りがいい。日光を反射する、軽いなどで申し分ない。
 早速今朝からジャージを白衣に変えて作業してみた。蚊よけのネット付きの麦わら帽子、白衣、長靴。僅か数十メートル離れたドッグランまで草刈り機を担いで移動するのだが、それを2階から見ていた妻が「異様な姿じゃ~」
 当たっている。だが蜂も太陽も怖い。苦肉の策ではあるが、我ながらグッドアイデアだと思った。これですぐに噂は広がるだろう。あの異様な格好をしている人は、ヤマト薬局の白衣のぺ天使だと。

https://www.youtube.com/watch?v=2_rE6luyjWk