理由

「こんなに遠かったかしら」と、ふと気が付いたから少し引き返してみると、なんと通り過ぎてしまっていた。もう20年近く、和太鼓や第九を聴くために総社市を訪れるたびに必ず寄っていた店がなくなっていた。
 元あった所には土台だったコンクリートと、店名を消された巨大な看板だけがあった。結構広い店だと思っていたが、建物がなくなると意外と敷地は狭かった。
 コンサートに行くのは日曜日だけだが、総社市民会館から歩いて5分の所にあるから便利で、毎回訪れるたびに席が空いていればいいがと心配しながら市民会館から歩いた。
 僕みたいなグルメでも何でもない人間に便利な店だった。うどんも、寿司も、てんぷらも、どれも僕にとっては美味しかった。日本人が好きなものの最大公約数みたいな、素人受けする店だった。1000円を超えるものもあまりなかったから、ベトナム人4人分を含めても、グルメの方の1食分には届かないだろう。日本料理のミニチュアみたいで、連れて行ったベトナム人達でその店を否定したものは未だいない。
 で、「なんでつぶれるんじゃ!」と僕は店舗があった前の歩道で何回か口にした。それだけ僕には想定外の「潰れ」だったのだ。あれだけ流行っていたのに理由が分からない。僕は休日の様子しか見ていないから、平日の人の入りは分からない。店員さんもかなりいたから人件費がかさんだのか。
 今日の僕の企画は、午前が近水園の紅葉、昼食がうどん、午後が備中温羅太鼓のコンサートだったのだが、昼はコンビニのおにぎりに変わった。チケットを買って2か月、待ちに待った今日だったが、一つだけ叶わなかった。
 やはり食べ物屋さんの経営って難しいみたいだ。そうしてみると我が家のドッグランとクレープ屋さんは恵まれている。最初から「潰れている」のだから。それも100年分くらい潰れている。

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