質問

 僕の問診の中に、「ストレスを解消するものが何かありますか?」と言う定番のものがある。若くて元気いっぱいだったら無理もきくだろうが、なかなか頑張りすぎ病に気が付かずに、全神経を集中している人が多い。
 今日来てくださった女性にも同じ質問をしたのだが、あえていつもの演出をしなかった。と言うのは定番に、つい脚色をしてしまって十中八九「ストレスを解消するものがパチンコ以外に何かありますか?」とやってしまうのだ。すると多くの人が笑いをこぼしてくれる。するとそこから先、みなさんよりリラックスして僕と接してくれる。
 なぜ今日その質問を定番通りで済ませたのだろう。後悔甚だしい。と言うのは、鮮やかな青い服を着て、とても穏やかそうないい表情をしているから、パチンコ以外の何かに変えたほうがいいのかなと迷いながら質問をしたから、結局何も思い浮かべることが出来ずに原型通りの質問をした。するとなんてことだ、その女性が答えたのが「パチンコ」
 なんていう親近感。六年間パチンコ屋に入り浸っていた僕と同類が、こんなに若くて穏やかそうな人だとは。遥か半世紀前の風景からしたら考えられない。女性と言えば、水商売上がりのお年寄りばかりだった。見るからにやつれた風貌で、直視できなかった。過酷な生き方は、ここまで風貌を破壊するのかと、社会教育の現場みたいだった。
 それに引き換え、今日の仲間?は、さわやかで穏やかで、いい母親であり、いい職業人だった。「もうパチンコ屋に、家一軒分くらい寄付しているんじゃろう」と言うとそこまでではないらしい。父親譲りの趣味らしいが、なるほど僕の息子と同じくらうの年齢だ。
 親に似ずパチンコはしないが、親に似ず酒は飲む。共有するものをまるで持っていないことに気づかされたストレス解消質問だった。

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