代金引換

 恐い話だ。胡散臭い学者よりなんだか信憑性がある。損得なしで話す庶民の話の方が、損得ばかりのあいつらより心に届く。 牛窓でも長閑な部落に住んでいるある女性が「今年はおかしいよ」と言う。今年どころか毎年おかしいと思っている僕は何事かと思ったが、彼女は「今年は鳥を見ない」と言うのだ。毎朝カラスを見ている僕はぴんと来なかったが、自然豊かなその方の家では、この時期はぎんなんの木にヒヨドリが群がるのだそうだが、「今年は一匹もやってこない」と言う。「雀は確かに日本中で減っているらしいね」と、これに関しては僕も感じていたから同調した。「スズメも勿論少ないけれど、ヒヨドリは一匹も見ない」と当事者でないと分からないような情報をくれた。牛窓では都心?に住んでいる僕には得がたい情報だ。  「やはり放射能のせいかしら?」と初孫が出来たせいか風貌に似合わないことを言う。放射能など意に介せなさそうに見えるが、しばしば漢方薬を取りに来るから、根っからの自然派志向なのかもしれない。田舎に住んでいるからとってつけたようなことをしなくても、ほとんどが自然派志向になってしまう。  同じ田舎としてかの地方の苦労は良く分かるが、風評などという言葉に翻弄されて真の犯罪者を見逃してはいけない。のうのうといい暮らしを続けられる人種を許してはいけない。田舎のおばちゃんの勘が当たらないことを祈るが、こんな勘さえ働かさなければならないストレスを代金引換で送りつけてやりたい。