圧倒

 このところ僕は毎晩のようにあるユーチューブを見る。それは外国の新人歌手発掘のオーディション番組だ。
 偶然見つけた女性の歌唱力のすごさに圧倒された。以来、彼女の歌を聴かなくてはその日のストレスを清算できなくなった。彼女の歌を聴けばその日の精神的な疲労が解消される。
 それともう一つの理由。彼女が誰かに似ているのだ。その誰かを思い出したくて見ている。恐らく嘗て漢方薬を作った人だろう。似た人がいる予感はするが、どうしても浮かばない。
 歌唱力で聴き手に涙を流させ、また飛び跳ねらせる、そんな歌手がこの国にいるのだろうか。楽器や踊り、ルックスなど、付属品で客を沸かすのではない。歌う力だけで聴衆を魅了するのだ。
 また歌の途中で自ら涙を流し、クライマックスをうたい上げた時にふと見せた笑顔、審査員の批評にありがとうを繰り返す姿、そういった姿勢にも僕は親近感を覚えた。国や人種を超えて似たような人はいるのだと気づかされた。
 風貌だけではなく、人格的にも嘗て似た人がいた、僕はひょっとしたら架空の人物を作り上げているのだろうか。

Ashly Williams' Emotional "I Will Always Love You" Prompts Tears - THE X FACTOR USA 2013 - YouTube