取り

 何で気がつかなかったのだろう。勝手に、嘗ての雰囲気で決めてしまって、僕が親しんできたフォークソングは、ユーチューブの中になんてあるわけがないと決めていた。当時で言うアングラだから、一般的ではなく、余り日の目を見ないと決めていたものだから、公にはなりにくいと思いこんでいた。それがどうだろう、ふと「労務者の唄」を歌いたくなって、どんな歌詞だったのかなとインターネットで探し始めたのがきっかけで、嘗て僕が傾倒した歌手達の唄が出てくるわ、出てくるわ。嘗ての姿そのままで歌っているのもあるし、現代のライブもある。  長年彼らのライブを聴いたことはないし、CDなども敢えて買っていない。牛窓に帰ってからと言うものは、薬局の仕事に没頭したし、寧ろ音楽よりもバレーボールに熱中した。長年忘れていた世界だが、ほんの少しばかりのきっかけで、時間を忘れて次から次へと見入った。  それにしてもさすがにインターネットの中は無限大の情報の宝庫だ。田舎に暮らすハンディーにも、唄と長年離れていた疎外感にも、何ら遮られることなく自由に嘗ての雰囲気が味わえる。僕より少しばかり年上の歌手ばかりだろうが、当時は雲の上の人達だった。話をするのも緊張するくらいだった。歌詞もメロディーも、勿論唄そのものも、憧れの彼方だった。なけなしの金で入場券を買って聴きに行っていた当時からするとクリック一つで次から次へと心酔した曲が流れて来るなんてまるで夢のようだ。時間を忘れて僕は聴き入った。 そんな僕の好みとはちょっと趣を異にするが、今月の21日の日曜日、午後14時から玉野カトリック教会でフォークコンサートがある。案内によるとかぐや姫とかフォーククルセイダーズビートルズなどの曲をやるらしい。セミプロ級の3つのグループだと聞いているから良かったら聴きに来て欲しい。僕も何十年ぶりに1曲歌わせてと頼んだのだがあえなく断られた。ただ僕も反省している。「歌う順番は取り、曲目はきよしのズンドコ節」こう要求したのがまずかったかなあ。