切符

 奈良駅牛窓から連れて行っていた子達のキップを買った。それを見ていた奈良在住の女性が、どうして各々が2枚のキップをもっているのか理解できなかったみたいだ。「オトウサン ドウシテ2枚アリマスカ?」と尋ねられた。彼女たちが4人で牛窓に来たときは、山陽本線で来たから当然キップは一枚だ。新幹線に今まで一度も乗ったことがないからシステムがどうしても理解できないようだった。  分かりやすく説明するとやっと理解してもらえた。2枚のキップのミステリーでしげしげとキップを眺めていた子がはたと何かに気がついたみたいで驚きの声をあげた後に又質問された。「オトウサン、シンカンセン タカイデスネ。ワタシ エンリョ」その女性は恐らく頭の中で計算をしたのだろうが、確かにアルバイトを3つも掛け持ちして学費や生活費を捻出している留学生にとっては高い。ただ僕が4時間も電車に乗って会いに行くのは至難の業だから新幹線ははずせないし譲れない。だから僕にとっては全く高くないのだが、若くて体力があるその子達には、新幹線は贅沢なのだろう。  僕のことを心配してくれた子が「オトウサン ナンニチハタラケバ 4ニンノキップ カエマスカ?1カゲツデスカ?ホントウノコト オシエテクダサイ」と深刻そうな顔をして尋ねた。これには参ったというか、有り難いというか、思わず僕は笑った。そこまでしなくても買えるが返事に困った。恐らく彼女たちにとっては、僕の服装や風貌がみすぼらしく見えるのだろう。確かに彼女たちに会うときはいつもその様ないでたちだし、その逆を想像することの方が余程困難と見た。飾ることが苦手というか、嫌いというか、自然なままが好きな僕の性格が功を奏して異国の苦学生や苦労働者達と同じ地平でつきあえるのだと思う。  結局最後の質問には答えることが出来なかった。