理解不能

 1週間以上休みが続くベトナム人が、片言の日本語で「オトウサン アルバイト アリマスカ」と尋ねる。3人いたが、それぞれが身振りで、できるアルバイトを表現していた。一人は掃除、一人は交通整理、一人はコンビニのレジ係。冗談半分だろうが、コロナのせいで大幅に仕事時間が減っているから、給料はかなり少なくなっている。故郷で待っている家族のことを案じて、あわよくばと言う本心も見え隠れする。もし会社の縛りがなければ実行に移すだろう。
 けなげなことを言うから「そんなんだったら、寮の庭の草を抜いて」と頼むと首を横に振る。一人は「何円でっか?」とアルバイト代を尋ねた。寮を提供してあげているのに何ということを言うのだと思ったが、とにかく彼女たちは草を抜かない。せっかくの砂利も草の猛威の前では無力で、歩いた時の石がすれる音以外で砂利の存在には気づきにくい。家を荒らすと言う日本人が持っている恥の文化は、ベトナム人には無縁らしい。
 僕はゴミの収集日に合わせて少しだけ草を抜いているが、到底追いつかない。見る間にと言う表現があっている。原則彼女たちがいない時間を狙って草抜きをするが、偶然夜勤明けの子とバッティングしても、手伝おうとはしない。お国柄か個人柄か知らないが、残念なところだ。
 ただし名誉挽回で言っておかなければならないが、明日4人が墓掃除をしてくれるらしい。山の上で放っておけば草ぼうぼうになるところだが、僕の家族のだれよりも、彼女たちが世話をしてくれる。自分が住むところは草ぼうぼう、山の上の墓掃除は手を挙げる。このギャップも理解不能