高島屋

 平日の午後4時前。僕は高島屋のすぐそばにいた。岡山駅のすぐそばだから一等地中の一等地だ。仕事時間中に、僕がそんなところにいる理由はないのだが、どうしても行かなければならない用事でそこにいた。と言っても大したことではないのだが、仕事をしている時間帯に僕が薬局にいないと言うことは滅多にないので、そこだけが大したことなのだ。
 駐車場から高島屋に向かっている時に、いくつもの店舗の前を通った。本来なら、駅と岡山城を結ぶメイン通りしか歩かないのだが、時間を倹約するために高島屋に近い場所に車を置いた。
 小さなお店が裏通りにはいっぱいあり、食べ物屋や飲み屋が多かった。その中にあるラーメン屋さんがあって、意外と小奇麗だった。丁度僕が通りがかったときに、恰幅のいいサラリーマン風の男性が入って行った。「午後4時にラーメンを食べるの?」と一瞬思ったが、あの体つきではおそらく常連さんだなと、職業的な好奇心が沸いた。この時間帯にラーメンを食べる?よっぽど好きなのだろう。今日が偶然この時間帯ではなく、どの時間帯でも食べたくなれば食べる、そんな印象を持った。だからあの体格になる。
 何でもある都会では、よほど理性のブレーキを酷使しないと、自爆テロの毎日になる。田舎で暮らし、まだまだ素材から調理しないと食卓に並ばないものが多い不自由さに感謝だ。
 高島屋のデパ地下。僕はしばしば利用するが、一度も総菜を買ったことがない。何となく田舎の貧乏人丸出しだから、気恥ずかしくて、いつも用を足したらすぐに出る。そう僕の、お気に入りのトイレなのだ。僕の憧れのデパ地下は、今日も清潔で綺麗だった。

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