無常

 岡山駅近くで用事を済ませ、市営駐車場まで歩いた。10分くらいの距離でいつもなら大通りを歩くのだが、その日は信号を待つ時間を惜しんだので、ふだん通らない裏道を選んだ。
 あるところで頭上にアーケードがあることに気が付いた。その間30メートルくらいだけだが、予期せぬところで突然現れたアーケードだったので思わず見上げた。アーケードは所々が破れていて、長い歳月放置されたままのように見えた。どうしてこんなところにアーケードがあるのだろうと思い、辺りを見回すと、入居者がいるようには全く見えないが、集合店舗のように、いや、ビルのように見えた。道路に面したところにもいくつか空き店舗があり、細い間口を有した少路にも、いくつもに仕切られた店舗が見えた。ただし看板もなく、営業している店があるようにはとても見えなかった。人気が全くないのだ。昼間ならまだしも、暗くなれば、入って行くのはためらうだろう。
 それでも何となく、記憶がある。そこで壁に見つけたのが「岡ビル」という名前だった。僕は高校生の頃4年間岡山市で暮らしていたから、少しは街のことを知っている。岡ビルと言えば、ひょっとしたら当時、それなりに賑わっていたビルではないか?
 高校生だからお金を持っていなくて何も買えないが、それでも店に入って雰囲気だけは楽しむことはできる。半世紀以上前のことだからあいまいな記憶しかないが、かつてのあこがれのお店が「これ?」
 恐らくかつての一等地も、今や裏通り。時間の無常さをまざまざと見せつけられる。街の呼吸から取り残されたアーケードの下を、なぜか吸い寄せられるように選択してしまった僕を、この風景は取り込みたかったのだろうか。

 

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