高島屋

 間違えないようにしっかりと記憶に留めたつもりなのだが、余りにも僕の価値観と違うので間違ったことを書くかもしれない。 高島屋で僕が買い物をすることはまずない。高島屋でしか買えないものは僕には必要ないからだ。今日も僕の用事で行ったのではない。かの国の女性が国の友人に資生堂のクリームを送るから足代わりでついて行っただけだ。資生堂はさすがで、向こうの国の人にとっては最高級ブランドなのだ。普通の人はまず買えないような値段のものを送ってくれと言うだけあって、友人はかなりの高給取りらしい。僕も驚くような値段のクリームを二つ買った。  と言うわけで化粧品のことを書きたかったのではない。その後地下の食品売り場に「見るだけ」の為に降りていったのだが、まさに見るだけで終わった食べ物が1つあった。美味しそうでも、高そうでも、高級そうでも、珍しそうでも僕はほとんど興味をひかれない。ただ何の気なしに魚売り場を覗いていて、小さなトレイの中に収まっていた一つの貝に目が止まった。日本人の多くは貝を好きだと思うが、御多分に漏れず僕も好きで、その生身の大きさにまず目を奪われ、10数センチあったと思う、その次にたった一つの貝のためについている値段に目を奪われたのだ。3380円だった。これはかなり意識して覚えたから間違っていないと思う。なるほど巨大な貝だが、値段も巨大だ。ほとんど買い物をしない僕が相場とか比較できる対象を知らないからかもしれないが、何かのフルコースが食べれそうな値段だ。たった1個の貝くらい、2分もあれば食べてしまう。2分で3380円かと下種な計算をする。こんなものが売れるのがさすが高島屋と思ったが、こんなに高い物を買って、味付けに失敗したりしたら目も当てれないなと、これ又下層階級の心配をする。上流階級の人は料理も上手だから、そんな懸念はないのだろう。 ただ驚くだけでなく嬉しい発見もした。そのアワビの産地が岡山県だったのだ。何故かその様な美味しいものは、東北や北海道を想像するのだが、嬉しいことに地元だった。漁師に何割が入るのか知らないが、多くの収入があればいいなと、途端に地元ひいきになる。朝早くから寒い中を出ていく彼らの仕事ぶりを良く知っているから、つい応援したくなる。北の海の物をあれ以来僕は口にせず、我が瀬戸内海の物を中心に食べているが、でもこれは高すぎて手が、いや口が出ない。 今日も足代わりで1日が終わったが、職業以外で少しだけでも人様の役に立てるのは嬉しいものだ。