笑顔

 電話口の向こうは優しい話し声。その声だけでどんな方かは想像できるが、記憶はなかった。カルテを見ると確かに去年の夏にある相談に応じて漢方薬を出していた。
 今日の注文は、お子さんたちのもので、コロナにかかりたくなくて飲んでいた漢方薬と、のどが痛いときに飲んでいた漢方薬。うまく飲み分けて健康に過ごしているらしいが、代理で取りに来られるお母さんが電話で「作っといてください、取りに行きます」と言った時に「お支払いは現金だけですかね?」と尋ねられた。ここが我が家の融通が利かない所で、みなさんの利便性より価値感を優先していて現金のみにしている。そこで僕が返した言葉。「現金がだめなら、物々交換でもいいですよ。米か魚か・・・」
 これは予想以上に受けたみたいで、電話口の向こうで解放された笑い声が上がった。
 1時間くらいして遠路やって来てくれたから「米と交換する?それとも魚?」と尋ねると想像通り飾らないいい笑顔をしていた。会計の後「また来ます」と言いながら、いい笑顔で帰って行った。

 

    いつもは3本入りの栄養剤を1本だけ取り出して買って帰るのだが、今日は珍しく3本入りを持って帰ると言った。
コロナ後遺症で理系から文系に変わって大学受験をした子のお母さんだ。大学に入っても部活などでしんどいみたいで、続けて飲ませると言った。「やはり子供優先で考えてあげないと」とよき母親の言葉を出したから「それでこそ母親じゃあ。お子さんが卒業するまで宝石を買いあさるのをやめて、パチンコで我慢したら」と勧めた。すると、そんな怖いところに行ったことはありませんよ。それにお金が無くなるでしょう」と言うから「勝てば儲かるよ」と教えてあげたが、僕がその怖い場所に2200日くらい入り浸っていたことを言うと驚いていた。しかし、いい笑顔で帰って行った。

 

    お母さんの痴呆の漢方薬をもう10年くらいとりに来ているお嬢さん。近いから1週間分ずつ持って帰る。雑談ぽく、お母さんの様子を尋ね、おもむろに作る。その間備え付けの雑誌などを読んで待っていてくれる。
今日作って調剤室から出てくると「もうできたんですか?」と言われたから、「手を抜いたから早くできた」と言うと、いい笑顔で帰って行った。

 

    関東在住の自律神経失調の宝庫のような方。2日間連絡がなかったから、やっぱり絶好調だったのだ。調子がよかったからいろんなことを考え過ぎて、またフラフラしたり背中が痛くなった。こうした時にはどうしたらいいかと相談を受けた。守りで行くなら横になって休む、攻めで行くならウォーキングと答えた。本人は手持ちのどの薬を飲んだらいいかと言う質問だったらしいが。
そこで僕は彼女に言った。「そんなに、サミットのことが気になるんか?」いい笑い声で電話を切った。

 

    ご法度の裏街道を歩くような顔つきの男性。歩いていたら人が避けてくれそうな得な人。毎月自分とお母さんの処方箋をもって薬を取りに来る。僕の薬局になぜか処方箋を持ってくるから、他の調剤薬局は助かっているだろう。
 左折やバイパスに入るのが年齢とともに下手になり、危険を感じたりすることがあるから、どうしたらいいのか尋ねてみた。左折の時にはウインカーに頼らず必ず、目視することと、左折を決めた時から後方を確認しておくこと。バイパスに侵入するときには、入る方が優先で、通行中の車は速度を落として入れてやらないといけないと教えてくれた。僕は全く知らなかった。譲ってくれる人に親切な人だと感謝ばかりしていたが、法律でそう決まっているらしい。
「なんも知らないんじゃなあ!もう免許を返したら!」と言いながら、いい笑顔で帰って行った。

核兵器使用の可能性が高まった。ウクライナと日本が狙われたら?ロシア戦勝記念日プーチン重大演説。安冨歩東大教授。一月万冊 - YouTube