気になっていた女性の妹さんがご自分の薬を取りに来たから「お姉さんどうしている?」と尋ねた。するとあれから急に元気になって、友達と会って話をしたり、散歩をしたり、大きな声で笑っている」と教えてくれた。
 数日前に息子が書いた煎じ薬の処方箋を持って来て僕が調剤した。2か月近く動悸がして、不安が日々募って来たらしい。いてもたってもおられないから煎じ薬でも飲む気になったのだろう。というのはお薬手帳を見ると従来飲んでいた処方が煎じ薬に代わっただけで、処方は同じものだった。ただ、粉薬はかの有名な〇〇〇の漢方薬で僕は不思議だった。処方した医者の名前が息子だったからだ。僕は息子に漢方薬を教えた時に絶対〇〇〇の会社の漢方薬は使わないようにと念を押していたのだ。そして数年息子はそれを守っている。だから初めて息子がそこの会社の薬を処方しているのを見て驚いた。恐らく患者がわざわざ僕のところに薬を取りに来るのが面倒だとでも言ったのだろう。ところがさすがにそれでは効果が出ずに諦めてやってきたのだろう。
 僕が薬を作って、煎じ方などを説明した時にもずっと胸を抑えたりさすったり、深呼吸を繰り返していた。動悸が収まらないのだ。ただ胸はさすがにしんどそうだが、声は大きいしよく喋るしで、人が見たら僕より元気そうだ。話の途中で、今日、午前中どうしていたのと尋ねてみた。すると息子が勤めている病院に行ったあと、バイクを飛ばし岡山市の歯医者に行き、そして家に帰り昼食をとった後一山バイクで越えて僕のところにやって来たらしい。牛窓町でも辺鄙なところに住んでいるから、岡山市の2か所を訪ね僕のところに来るまでに何時間バイクを走らせどのくらいの距離を走ったのだろう。それを聞いた後、僕が発した言葉「めちゃくちゃ、元気じゃん!」
 妹さんが内緒話として教えてくれた。実は今日予約していた総合病院の心療内科にかかったらしいが、専門医が「そんなに調子がよくなったのなら、その漢方薬で治療してください」と言って帰してくれたそうだ。田舎の薬局の漢方薬ならボロくそに言われそうだが、さすがに医者が処方しているから後押しをしてくれたのだろう。
 その女性が帰った後娘が一言「お父さんが、元気じゃが!と言ったのが効いたんじゃない?」
 なんでもいい、「効きゃあよかろうが!」を信条に泥臭くやって来たので。