裏腹

 「そんな怖い顔をしているからじゃあ!」と言える薬剤師は全国でも珍しいかもしれない。そう言われてなるほどと認める人はいないが、彼は「陽に焼けて真っ黒じゃからかなあ」と半分くらいは認めた。
 いつも血圧を診てもらっている病院の先生に「最近痩せてきた」と訴えたらしい。しかし先生は「何が今釣れるの?」と全く関心を寄せずに、魚の話だけして帰ってきたと教えてくれた。もう何年も若いのに高血圧でかかっているから、気心は知れているのかもしれないが、見かけとは裏腹に意外と繊細で、いや臆病と言ったほうがいいかもしれないが、本人にとっては勇気を出してした質問なのだ。
 ほとんどのお医者さんがひたすら受験勉強を勝ち抜いてきた人たちで、その中の多くがそもそも医者の家庭出身だ。だから中学を出てすぐに海に出て、漁師になったような人と生活上の接点などほとんどないだろう。唯一の接点は「患者」でしかないのではないか。だから、得体のしれない人間に見えて、当たり障りのない距離感を保つ。
 「いつも魚の話ばかりじゃあ」とも教えてくれたから僕の推論は当たっているだろう。
 僕はどのくらいの期間に、どのくらい痩せたか確かめて、その他の体調も問診して確かめた。おそらく夏の暑い時期も海に出続けたせいだと思うから、そんなに心配しないでと励ました。ひと月にこれ以上痩せたら何かを疑ってみると言う不文律があるが、それはクリアしていたし、そもそも働きぶりからしたら痩せて当然だ。この夏に何十回、僕がインフルエンザの方に勧める栄養剤を取りに来たか。それだけ仕事がきついのだ。
 ただし、痩せた不安感を払しょくしてあげるのは、僕みたいな薬剤師よりもお医者さんのほうが数倍信頼性がある。世の中は色々なパーツで成り立っている。そのことを理解して労ってあげたらどんなに喜ぶだろう。こんなことを思うのは、勝ち抜くことが出来なかった人間のひがみか。

 

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