原点

薬剤師兼医師の先輩へ

 電話では詳細が分からなかったので、あのような返事をしましたが、こうして状況を詳しく教えてもらえば、桃核承気湯で下痢をさせたり、じわっと逝ってもらえる薬を処方したりするより、一気にその場で首を絞めて葬送(おくり)だすのが最善の道だったのではないかと思います。うまく利用されたときの憤慨は誰もが共通です。よく朝の7時半まで我慢できましたね。僕なら深夜便です。彼は薬剤師と言うより、何処にでもいる患者と同じです。専門知識は恐らくないのでしょう。最早大企業の経営者でしかありませんから、 同級生と言えども、○○さんにはほとんど、部下に接するのと同じ感情しか持っていなかったと思われます。従業員が何千人いるのか知りませんが、恐らく自由にあごで使える人達ばかりでしょうから、その態度が身に付いてしまっているのでしょう。大学時代余りつき合いがなかったそうですが、今回のエピソードを聞くと接点が生まれていた方が不自然です。  そもそもドラッグストアは僕に言わせれば、人間の身体を薬という化学薬品の最終処分場にしているような業種です。不必要に消費を煽り、体内に捨てるのですからかなりあくどいです。素人が自分で選択して治療できるわけがありません。田舎の小さな薬局のひがみかもしれませんが、恐らく確実に治療している人間の数はドラッグストア100店分より僕の方が多いでしょう。  今度のことでもう一つびっくりしたのは、やはり医者って医学的な気配りが繊細だってことです。僕は電話で話したように圧倒的に医者の知識の多さにいつも敬服していますが、 それについていける薬剤師なんて滅多にいないと思います。分業論にも少し触れましたが、門前薬局は医院の真ん前で下請けしているだけなのですから、どうして患者のためになるでしょう。眼差しはいつも院長に向いているに決まっています。患者100人失っても、院長一人の機嫌を損なわなければ経営は安泰なのですから。  ○○さんが突き放したことで彼になんの支障もないでしょうが、全ての人間が利害だけで生きているのではないってことくらいは・・・分からないでしょうね。○○さんが「今朝は早々から電話して、大和から、昔と変わらぬ言い方でアドバイスをもらい、僕なりに対処しました。」と書いていましたが、実は僕も同じことを感じていたのです。昔と変わらない愚痴や切り込みや笑いがとても懐かしく、いや懐かしいのではなく30年以上の時間を一瞬のうちに消して、あの頃に接着してくれたように感じました。狭くて汚いアパートの畳の上に寝転がって話している感覚でした。お互い当分まだ現役でいなければならないようですが、いつか寝転がって嘗てのように世の不満を魚に憂さを晴らしたいと思います。「なんかいいことない?」何千回くり返した言葉か分かりませんが、あの頃の非生産的な底なしの怠惰な生活こそが僕には原点のような気がします。                                      大和