寝返りは大切なもの。かしこまってなんか寝られない。今インターネットで調べてみたら、寝返りの効果として・血液の循環をよくする・発汗の効率を上る・筋肉の拘縮を防ぐ・褥瘡を防ぐ・汗疹を防ぐと出ていたが、この女性が持っているトラブルは腰痛だ。お百姓で腰痛を抱えながらも休むことはない。職業柄痛さと同居しているのか、歩くさまやその他の動作でどのくらい痛いだろうなと想像しても、絶えぬ笑顔でごまかされる。ただポロッと「痛い」と言う言葉は漏れてしまうが。
服用してから3か月目くらいから何となく痛みが弱くなったと2週間おきに漢方薬を取りに来ては教えてくれていたが、今日は「寝たままで寝がえりが打てるようになった」と教えてくれた。多くの方にとって、寝返りは寝たままでするものだからピンとこないかもしれないが、あまりの腰痛だと身動き取れないのだ。この方も寝返りを打ちたくなったら、一度起き上がって向きを変えてまた布団に倒れるのだそうだ。それが無意識のうちに寝たまま姿勢を変えていたから、嬉しそうに報告してくれた。
牛窓のキャベツは有名だから、県内の方はもちろん県外の方もその女性が作ったキャベツを食べたことがあるかもしれない。しかしそのキャベツをいくら食べても、彼女の腰痛の辛さは届かない。お百姓さんの働く姿を見たことがない人たちにとっては、O脚で腰が曲がった女性たちの働く姿は無く、スーパーの棚に並んでいる野菜の光景こそが「農業」なのだ。
もし消費者がその姿を見たりしたことがないのならそれはそれで仕方ないが、農業を発展させるための農林水産省の役人がそうだったらどうだろう。農家の方々が懸命に土と格闘している姿を見たことがなかったら、どんな行政をするのだろう。
幼い時から優秀で、学校と塾で多くの時間を費やしたエリートたちに農業の現場を想像できるのだろうか。あの太陽の下でかく大きな汗、臭いなど想像できるのだろうか。おそらくまるで教科書をめくるようにしか理解できていないから、日本の農業を彼らには救えない。衰退の一途をたどる多くの業界で、現場の人がことを勧めていくシステムをとらなければ、そのうちこの国はアジアの最貧国になる。将来の若者はアジアのどの国に出稼ぎに行き、何人に顎で使われるのだろう。ベトナム人?カンボジア人?ミャンマー人?フィリピン人?ネパール人?