今週同じような理由で不調をきたしている男性を二人お世話した。あまりにも年恰好と言い状況と言い似ているので「兄弟じゃないのと」と二人目には言った。
僕は就職したことがないのでさっぱり分からないが、恐らく二人の話を合わせると定年は60歳?今時の60歳は僕らからしたら結構若く見えるが、二人とも定年退職した後に再雇用されている。
耳にしたことはあるが、この再雇用についてはあまり理解できていない。問診のついでに内容を聞いてみると、かつての部下が上司と言う、なんともプライドがある方には不都合なシステム。まして威張り散らしていたようなものならしっぺ返しを食らいそうだが、運よくこの二人はそういったタイプではない。
しかし、どちらもうつうつとし、イライラや不安と言った、いわば真反対の感情から逃げられなくなっている。僕は興味本位でと言うより本質を理解するために「昔の部下が偉そうにしているの?命令口調で言ってくるの?」と尋ねてみた。するとさすがにそこまではないらしいが、仕事柄指示調にはなるらしい。一人は割り切っていたが、もう一人は少しひっかかるみたいだった。
滅多に記憶に残るような言葉を発したことがない父だが、一つ記憶に残っている言葉がある。父のオリジナルか、世間一般の格言か分からないが「抜かれて嬉しいのは子供だけ」と言ったことがある。僕が牛窓に帰って何年か経った頃だと思う。実際に抜かれて嬉しかったのか、抜かれて早く喜びたかったのか分からないが、この二人の相談者には現在の地位が結構屈辱なのではないかと想像した。いずれ割り切れる時が来れば心を病むようなことはないのだろうが、算数のようにはいかない。森羅万象、割り切れぬことばかりなのだから。