四国村へ紅葉を見に行った。と言っても僕が見るためではなく、来年帰国するベトナム人たちを連れてのこと。もうそろそろ僕も運動神経が駄々下がりで、人様を乗せて車で遠出も最終章に差し掛かったので、これで最後かなと思いながらのツアーガイドだ。
何度も行っているが、1か所だけ見学が耐えがたい建物がある。民家は1700年代に作られたものなどが四国中から集められていて、それはそれで、郷愁を誘るが、僕がその中に入るだけで辛くなる建物がある。四国村のホームページから抜粋したのを貼り付けると以下のようなもので想像してもらえるかもしれない。
宮崎家砂糖しめ小屋
年代 1865年頃(慶応年間・江戸時代末期) 旧所在地 香川県坂出市林田町 国指定重要有形民俗文化財
砂糖をつくるためのエンジンは、牛でした
“砂糖しめ”とは、サトウキビの汁をしぼるという意味。かつて香川県では「讃岐三白(さぬきさんぱく)」と呼ばれる砂糖・塩・綿の生産が盛んで、四国村ミウゼアムにある2つの丸いしめ小屋は、地域に根ざした伝統産業を今に伝える貴重な建物です。建物の中央には「しめぐるま」と呼ばれる3つの石臼が置かれ、それら石臼に取り付けられた腕木を牛が引いて臼を回転させ、サトウキビをしぼっていました。建物が円形なのはそのためです。
円形の建物なる所以は、中心部にサトウキビをつぶす石臼があり、それを回転させるために、牛が直径10メートルもない円周を、人に引かれ、人に鞭打たれ、回り続けているのだ。太い木の枝を柄にして石臼を回転させるのだが、1日何時間、何百周強いられたのだろう。重たかっただろう、つらかっただろう。そして単純さに心を傷めただろう。動物愛護などと言う言葉がない時代だから、誰もそんなことを考えないのが当たり前だが、今の時代からしたら残酷極まりない。人間が、生きとし生けるものの頂点に立って申し訳ないと思ってしまうのだ。
若い時には何も感じなかったことでも、我が身の衰えを感じ始めると、ものの哀れが身に染みる。もっと早くこの感受性が磨かれていたら、もう少しは人様のお役に立てれていたのに。無念!