暖房

 パンフレットを見たわけでなく、妻が暖かい服があると言って興味を示していたのを遠くから聞いていただけだ。だから合っているかどうかわからないが、服の中に銅線が張り巡らされていて、電気を通すと暖かくなるみたいだ。もし本当なら理屈は簡単だ。電熱器を着ていることと同じなのだから。
 電源は何なのだろうとか、乾燥して肌がかゆくなりそうだとか、素人ながら思うことはあるが、購買意欲をそそられることは全くなかった。温かくおれることが冬の大いなる喜びとは思えなかったからだ。寒いよりはいいかもしれないが、今別に不自由していないからこれ以上暖かく暮らしたいとは思わなかった。
 薬局はさすがに常にエアコンをつけていて、28度に設定しているが、居住空間は今いる場所を温めるだけの生活様式をそれこそずっと続けているから、暖房を使うのは台所だけと言うことになる。食事の時やニュースを見るときに慌ててエアコンをつけるが、食事やテレビを見終わったら消す。
 寝室も暖房を使わないから恐らく10度以下で、風呂で温まった体で直行する。湯たんぽだけで朝まで心地よく眠れる。
 朝は寒い台所に行きエアコンのスイッチを入れる。温まるまで時間はかかるが、最初の5分くらい我慢するだけで済む。
 僕らの年齢になるとこれらのことは危険なのかもしれない。しかしずっとしてきたことだから苦痛ではない。交感神経の興奮時間のほうが少し長いかもしれないが、冷水と温水を繰り返し浴びるように自律神経を正常に働かせるためにはいいような気もする。
 外気温とさほど違わない部屋で過ごすのは、意図して健康法を行っているのではないし、電気代を節約しているのでもないが、なんとなく身の丈に合っていないように思えるのだ。寒いこの季節に春をまとう必要はないように思うのだ。記憶の中の冬を繰り返しているにすぎないのだ。

 

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