底力

 数年ぶりにあいつがやってきた。そのせいで、たった1mを歩くのに数秒かかってしまう。調子に乗って働きすぎていたのかもしれない。1日10時間は立ち続けだからかなりの負担が腰に来ていたのだろう。魔女の一撃は薬局の仕事分担に多大の影響をもたらす。ただ前回までとは違って今は若い2人が僕を思いやってくれ、多くの分野をになってくれているから、精神的に追い込まれることはない。寧ろ僕がいない方が漢方の分野で訓練を積むことが出来るだろう。今日も初めての相談者を2人応対してくれた。 学校の二酸化炭素濃度も2人が調べてきてくれている。その結果を見ていると教室内の温度は、石油ストーブを使っていても10℃をやっと超えるくらいだ。こんな話をしていたら、兵庫県の中部?から来て下さる方が、あの辺りでは冬も教室に暖房がないと教えてくれた。何かの間違いだろうと思ったが、と言うのは僕は石油ヒーターでなくて都会はエアコンかなと思って会話を始めたのだから、暖房がないという話が出てくるとは思わなかった。  その家族の住む街特有のことではなく、意外と兵庫県の都市部は学校に暖房がないらしい。理由がふるっている。鍛錬のためらしい。前世紀の言葉みたいな理由を聞かされるとは思わなかった。前時代的な言葉が理由としてしっくり来ない。寧ろお金がないからなんて言われるとそうかなと納得しそうだが、武士道精神もどきには違和感がある。それよりもよく都会のモンスターなんとかが許すと思うが、意外とその辺りは教育委員会と考え方が似ていたり・・・いや、あり得ないな。半ズボンやスカートから脂肪のない足を出しているのは見るだけで冷えノボセを起こしそうだが、子供は強いのだろう。とても健康によいとは思えないが、それで何の不都合も起こっていないのだから、意外と都市部の子供の方が精神的にも肉体的にも強かったりして。あの環境の悪さを生き抜くのだからどちらも確かに強靱を要求されるのかもしれない。 「今日は寒かったのに先生が暖房を切った」せいぜいこの辺りのモンスターの言い分だが、都会の親を見習わなければならないかも。都会の高校がスポーツが強いのは、単に人を集めてくる能力だけではなく、意外なところで培われた底力があるのかもしれない。