僕にコロナのワクチン接種を受けるかどうか質問した後に、製薬会社のセールスが不思議そうに言った。
僕はその気がないから即答で「受けない」と答えたのだが、この答えが彼にとって好ましかったのかどうかわからないが「不思議なんですよね。多くの薬局の先生がワクチンの接種を受けているんです」と声を落としていった。彼は漢方薬専門の会社だから、彼の言う薬局はすべて漢方薬を扱っているところだ。それもほとんどが漢方薬を中心に経営を成り立たせているところで、かなりの確率で「漢方専門」などとうたっている。
断わっておくが、僕の薬局は漢方専門薬局ではない。田舎で偶然つぶれなかったおかげで、昔ながらのＯＴＣ（自分の判断で薬を選んで初期治療する）や処方箋調剤や特別養護老人ホームの調剤などもやっていて、その上に漢方薬もやっている。いわば何でも屋。利用してくださる人が何を選択してもいいようにしている。もしこれで薬局に一歩入ったら高価な漢方薬を買わされるなんてことにしたら、もうとっくの昔、安土室町時代につぶれている。生き残っているのは、誰でも入ってこれる薬局だからだ。
話はそれたが、彼が声を落としたのには理由がある。コロナに打ち勝つ免疫アップなどとおそらく巧みな話法を駆使している人たちが、自分はワクチン頼みだからだ。免疫が本当についてワクチンなど不要と思うのなら受けないはずだと、彼は信じていたからなのだ。失望感か不信感かわからないが、信頼し尊敬していた人たちの行動が腑に落ちなかったのだろう。
僕が受けないのは、インフルエンザも何も受けたことがない従来のままを踏襲しようとしているだけのこと。日々ウイルスや菌に侵されるような職業だから、いまさらと言う感じだ。特に今回のワクチンに関しては、接種後数年間追跡調査をしなくていきなり人体実験だから、お断りする。
「ヤマト薬局の旦那はワクチンを拒否してコロナで死んだ。そうしたニュースを聞いてしてやったりと喜ぶ人の顔が浮かぶわ。みんな喜ぶじゃろうな！」と言うと、まず第一に彼が目の前で喜んでいた。願わくは、これ以上このネタで喜ばしたくはないが。
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