平成五色太鼓

 開場時間の2時間前に牛窓を出て、演奏が終わったらすぐに帰った。丸亀の滞在時間は3時間。行く前に2時間漢方薬を作り発送し、帰ってからも2時間漢方薬を作って発送した。今日丸亀市で行われた野中燿博の和太鼓コンサートは、ベトナム人のドタキャン問題で出鼻をくじかれたが、一人で県外に出かけて、まるで県内を移動しているかのような疲労感で済んだことが大きな予期せぬ収穫だった。もう10年以上も、県外に出かけるときはベトナム人を4人必ず同乗させていたから、一人で緊張感を保ちながら、それでもなおリラックスして運転できるかわからなかったが、まだ大丈夫みたいだったのがうれしい。
 結局チケットは4枚無駄になった。昨夜まで改心したベトナム人が連絡を入れてくるのではないかと、他に譲るのをためらっていたが、結局は日の目を見なかった。こんなことなら昨日岡山駅前で偶然出会った方にあげておけばよかった。昨日も和太鼓のコンサートで、同行する違うグループのベトナム人と駅近くで待ち合わせていて、時間が迫っていたのでチケットのことは頭に浮かばなかった。道中そのことばかりが悔やまれた。
 和太鼓評論家としての評価をここで一発。野中燿博は硬派だと思う。その硬さが気持ちいい。和太鼓好きにはたまらないと思う。香川県でも活動を始めたってことだから、香川の人はまた太鼓を楽しむ機会が増えたってことだろう。もともと盛んな県だからうらやましき限りだ。今日のコンサートで最も印象深かったのは、千葉県からやってきた共演の「平成五色太鼓」の選抜メンバー4人が素晴らしかったことだ。僕はもともとのチームかと思ったくらいだ。今回応援出演ということだから、その実力は鍛え上げられたプロと見まがうほどだ。正確で力強い演奏に会場も酔いしれたと思う。
 本当に何年振りかで和太鼓の演奏を一人で聴いた。もちろん一人で聴いても演奏の良しあしが変わるわけではない。ただ今日はっきりとしたことがある。僕は和太鼓の演奏を聴くのが大好きだが、その演奏を聴いて驚き感激するベトナム人の喜ぶ姿を見ることも大好きなのだ。そういった機会を提供されることのない彼女らに、微力ながら貢献できる喜びを与えてもらうのだから、僕が得ているものは大きい。これはおそらく何十年続けてきた仕事と同じ底流だと思う。与えなければ何も得られるはずがない。