異様

 もうほとんど、異様な光景としか言いようがない。それは今日、建部町文化センターで行われた和太鼓のコンサートが始まった瞬間のことだ。僕ら5人は桟敷席にいたのだが、あるベトナム人が舞台ではなく客席のほうを見ながら、僕に何か伝えようとした。まだ日本語ができない女性だから、身振りで客席のほうを見ろと伝えてきた。その時にマスクをするようなしぐさをしたのだが、なんと見てみるとほとんど全員がマスク姿なのだ。あまりにもそろいすぎていたので、漏れて居る人を探したが一人も見つけることができなかった。いや漏れているのは僕だけだ。今日は地元の「建部ほっぽね太鼓」という地元の太鼓グループの競演もあってか1000席はあろうかというようなホールがほぼ満席だった。1000人がマスクを着けている姿は、それを上からすべて見下ろせるのだから、まさに異様な光景だった。誰かに命令されて動く集団のように見えた。実際にそんな指示があったのかどうかは、町外の僕にはそこまではわからない。ただ僕たちにもエタノールで手の消毒はやらされた。受付の人が熱心に勧めてくれたので僕も従ったが「心が汚れているので、心も除菌できますか?」と尋ねたら、一種にいたベトナム人達を見て「いえいえ、みんなおきれいです」と言ってくれた。和太鼓評論家としての苦言一つ。塩原良さん。上手だが歌いすぎでしゃべりすぎ。もっと太鼓を聞かせて。