内実

 僕の薬局をご存じの方はよく分かると思うが、決して漢方専門薬局ではない。だから漢方薬が鎮座ましているわけではなく、一般のOTC薬品(サロンパスやリポビタン)が多くを占めている。病院の処方箋も調剤しているし、特別養護老人ホームの薬も調剤しているから、いわば何でも屋なのだ。何かに特化した薬局を作りたいとは思った事はないから、当然と言えば当然で、この町に1軒しかない薬局だから、何かが不得手では申し訳ないのだ。田舎に住んでいる人達に、こと薬に関して不便やハンディーを負って欲しくない。寧ろこと薬に関しては圧倒的な恩恵をもたらしてみたいと密かには思っている。  漢方薬局ではないごく普通の薬局に、一体どんな人が漢方薬を取りに来ているか今日は紹介してみようと思う。漢方薬は奇跡を起こすものではなく、しかしかなりの確立で効くものと理解して頂けたら嬉しい。何ら特別のものではないから、値段も何ら特別の高額商品でないことも理解して欲しい。風邪薬など漢方薬で調剤すれば、パブロンよりもベンザよりも安くできる。逆を言うと、奇蹟のようなことをうたい、生活を切りつめなければ払えないような値段は作為以外なにものでもないって事だ。  昨日僕が漢方薬でお世話した不調の種類を列挙してみる。所詮漢方薬の守備範囲なんてこんなものだ。難病奇病は商売としては魅力があるが、それは大病院の専売特許だ。薬局ごときがうたってはいけない。最小単位は1週間分。最長は一人だけ1ヶ月分だった。 世に言ううつ病。僕に言わせばウツウツだ。ほぼ完治。過敏性腸症候群6人。これは下痢型、腹痛型、ガス型それぞれだ。肥満。ヘルペス後遺症。一人はほぼ完治。一人は昨日から始める。起立性調節障害。青春前期のとても大切な時期だから絶対治してあげたい。漢方薬が得意な分野だ。アトピー皮膚炎。一人は45日で7割治った。もう1人は始めたばかり。心臓病のお年寄り。10日分ずつ楽しみに取りに来る。シミ。もともと美しい人だがそんな人に限ってもっと美しくなる。心ウキウキ。二人。病院に行くと安定剤が出て眠くなってから飲まない。漢方は安心して飲めるらしい。何かあると取りに来る。過活動性膀胱。よく効いたから絶対私の処方を覚えておいてとひつこく頼まれた。もう1人ウツウツ。完治後、漢方薬をもっておくだけで再発しない。 これが冬だったら、風邪薬の3日分なんてのが多いのだろう。春なら花粉症か。要はどこにでもあるようなものしかお世話していないって事だ。いやお世話できないって事だ。漢方薬の原料が枯渇し、高騰している今こそ、効くだろうものだけに使って是非資源を守って欲しいと思う。