出番

 病院の薬を処方箋によって調剤することが増えるにしたがって、特に外科、整形外科領域において、違和感を持つことが多い。多くの方に共通して処方されるのは、ロキソニンと胃粘膜保護剤だ。それに張り薬が付いている。ほとんどがこの処方で時に重症患者と思われるような人に、リリカが出る。脊椎間狭窄症には血流改善剤が出る。大げさに言えば、これでほとんどの症状をカバーしている。だから整形外科の門前薬局なんかどれだけの在庫ですむのだろうかと思ったりもする。  処方箋をもってくる人の症状のほとんどを漢方薬はお世話できる。もっとも頼まれもしないから会話には出さないが、僕ならこうするとつい思ってしまう。西洋医学も東洋医学も長所短所を持っているが、漢方の優れているところは、本治、標治と言って、必ず体質を改善することと不快症状を取り去ることの両方が同時に進められていくことだ。漢方薬自然治癒力を導きながら不快症状を如何に早く取り去るかを考える。現代医学は、その人がその時点でもっている自然治癒力で治す。現代医学では、自然治癒力を増強出来ないから、その時点での治療が限界になる。  たとえば腰痛でも関節痛でも、漢方薬だったら必ず血液循環を改善することを本治(体質強化)とし、筋肉や腱の緊張をとることを標治(不快症状をとる)とする。そうすれば治ってしまうから薬を飲む必要がなくなり、いわゆる完治の状態になる。無駄な化学薬品を体に入れ続けることもなくなるし、医療経済にとっても貢献できる。  こんなことを考えながら患者さんに投薬指導など出来ないから、なるべく出しゃばらないようにしている。ありがたいことに病院派と薬局派の両方がやってくる薬局だから、僕の出番もかろうじて残っている。