仕事

 「仕事が楽しいと思ったのは今回が初めて」と言いながら顔は緊張していた。本来なら喜色満面で報告してくれてもいいのだろうが、持って生まれた几帳面さか責任感か知らないが、夢だった職に就けても又緊張している。もっともそれが彼女の最大の長所だから、体調を崩さないように頑張って欲しい。  やりたかった仕事で、信頼され、チームワークがよければ彼女のような評価が口から出るだろう。ただ世の中でどのくらいの割合でやりたい仕事に就けているのだろう。仕事は生きていく糧を得るためと割り切っている人も多いだろう。アフターファイブや週末に自分を取り戻すことで、仕事に耐えている人も多いのだろう。  仕事で信頼されるにはかなりの時間を要する。その時間を上司や雇用主が耐えてくれる保証はない。理不尽な要求がまかり通っているらしいから、余程タフでないと、評価を得るまで持たない。それを見越して採用するところがあるくらい今は悪意に満ちた時代だから、これ又余程タフでないと続かない。  自分が生き残るのに必死だから、仲間のことなど構ってはいられない。連帯は分断の前で如何にもひ弱だし、シュプレヒコールのあげ方すら知らない。なんとも守りに弱くなったものだ。  若者は、いや若者に限ったことではない、一体どのくらいの人が将来に希望を持っているのだろう。将来は明るいなどと疑うことなく信じることが出来る人が一体どのくらいの割合でいるのだろう。やたら保守回帰が叫ばれるが、その輩に後ろめたさはない。弱肉強食が一段と進むだろう。抵抗は受容だが反撃は破壊だ。