訛り

 東北でもない、九州でもない、沖縄でもない、勿論岡山でもない。何処の訛りがかかっているのだろうと思ったら、中国の人だった。それにしてもその程度の誤解を与えそうなのだから見事な日本語だ。どのくらい日本に住んでいるのか分からないが、大したものだ。多くの国の人達と知り合う機会が日本の何処にいても増えたので、彼らの日本語の上達能力に驚かされることがしばしばだ。僕など9年間も英語を勉強してさっぱり喋れないし聞き取れないのだから、ほとんど無駄だったと言える。 中国の人に漢方薬の注文を受けるのだから、何となくくすぐったい。もっとも柔道は今や外国のものになってしまいそうなのだから、漢方薬が日本の方が優れていると声を大にして言ってもいいのだが。ただ病気を治す話になるとさすがに僕の方が当然プロなのだが、こと養生法については、興味深いことを色々教えてくれた。まだ日本には伝わっていない土着の健康法が多かったから面白かった。  恐らく日本で相当努力してその成果を積み上げている人なのだろう、とても謙遜で、ニュースで伝えられるかの国の人物像とはかなり違う。こうした個人での交流を一気に壊してしまう国という訳の分からない概念が衝突している。国と言っても所詮一部の政治家や役人の思いつきにしか過ぎないのだが、その思いつきで国民を生かしもし殺しもする。あほくさい話だ。  そう言った何様かと思う品のない奴らがこれからテレビや新聞に登場する。一瞬でも顔を見たくないからリモコンを手から放せられない。煽られて下々が対立したら思うつぼだ。檻の中に入るべき奴らが再び大手を振って歩き出すのかと思うとやりきれない。訛りに訛って真心を尽くす、そんな不器用さしか信用できない。