反撃

 この青年はどんな気持ちで大声を発し続けているのだろうとふと考えてしまった。  ある老人に頼まれたサポーターを日曜日に薬局?ドラッグ?回りして探した。良くテレビで宣伝しているようなやつで僕の薬局では扱いがないから、日曜日に探してきてあげると約束していたのだ。何処にでも売っていると安易に考えていたのだが、意外と売ってなくて数軒廻った。そのうちの一つのドラッグストアでは、空しくて、空恐ろしい光景を目撃した。  品出しをしているのだろうか、若い男性が商品棚の前にしゃがみ込んで、なにやら品物を補充していた。どこにでもある光景なのだが、その男性が違っていたのは常に何かの宣伝文句を叫び続けていたことなのだ。すぐ傍を通ったのだが何を叫んでいたのかあまり記憶はない。何かの商品が今日は安いというようなことを言っていたと思う。肝心の何かを覚えていないのだからほとんど効果はなくなんだか騒がしくて品を落としているだけのように感じた。もっとも静かで品があってはその手の商売は困るのかもしれないが、何ら実利はないように想像できた。  ただ、ほとんど効果がないだろうことを、まるでテープレコーダーのように、いやテープレコーダー以上に繰り返さされる苦痛や屈辱はないのだろうかと思った。20歳前後だと思われる数人の若者が店舗のあちこちで同じようなことをやらされていた。僕には青年達を人格ある働き人として扱っているようには見えなかった。機械以下、まるで家畜のようにしか見えなかった。若い人達がこんな仕事しか与えられない国って一体なんだろうと考えてしまう。一部の資本家が、まるでピラミッドを作らせた古代の労役よろしく人間を人畜のように扱っていいと思っているのではないか、そして彼らと結託している政治家どもがお墨付きを与える法律を作ってきたのではないかと思ったのだ。  僕は何故青年達が怒らないのか不思議だ。怒り狂って大人がいい目をしている社会を破壊しようとしないのが不思議だ。若者達が飼い慣らされている社会が秩序ある社会だとも思わない。老いた者達が冨を独占している社会こそ秩序から逸脱している。もっとよこせ、人間らしい仕事をよこせと何故、富める者達の領域に攻め入らないのか不思議だ。ほとんどロボットに近いような仕事をやらされるくらいなら、ほとんどロボットのように冷酷に反撃すべきだ。