景品

 これは娘夫婦に教わった。 二人は岡山市の便利なところから毎日通ってきているのに、牛窓で買い物をよくする。普通の人の行動とは全く逆だ。地元の人は車を運転できる人なら出来るだけ大きな店があるところまで出ていくが、二人は逆だ。ちょこちょこ薬局を抜けては牛窓で買い物をする。そのほとんどが個人商店だ。圧倒的な品揃えを誇るところとは比べものにならないくらい貧弱だが、敢えて牛窓で消費するように努めている。この精神は勿論僕にもあったが、この様に潔癖には行動を起こしていなかった。ついつい便利を優先して地元の経済を気遣うことはしなかった。  二人に触発されて、最近薬局のサービス品に牛窓の特産品を利用することにした。牛窓の人に牛窓のものを配るのは、サプライズがないからどうかなと思っていたが、最近は薬局に来てくれる人の半数が遠くの方々と言うこともあって、思い切って方向転換してみた。まず先月取り入れたのが祇園商店の牛窓の白菜を利用したキムチだ。これは娘が農協の特産品売り場で見つけて美味しいことを確かめていたから、まずトップバッターにさせてもらった。案の定景品で当たった人がその後直接買いに行ってくれたらしい。今月は老舗のきびや菓子舗のまんじゅうや羊羹と、山本さんという農家の方が作っているスイートスプリングというミカンにしてみた。市外から来てくれた人が、当てたいと願掛けてくじ引きに挑んでいる姿が印象的だった。今までに色々豪華な景品も用意して毎月の恒例行事にしていたが、皆さんのくじを引くときの意気込みが今回は違うような気がする。一回がらがらを回す毎に、牛窓が有名になればいいがと、遅ればせながらのこの町への貢献を誓う。  ひとつ工房と言う山の上のパン屋さんは数年前、かの有名な馬路村から越してきた方々だが、もうすでに有名になっていて今更お手伝いすることはないが、新旧の力を少しでも町外に発信できればと遅ればせながらに思う昨今だ。