くじ引き

 そもそも薬局の仕事内容など暗いものだから、それを払しょくするために、僕が跡を継いでから毎月くじ引きをやっている。娘が戻ってきてからすべて彼女に任せていたら、景品がどんどん垢抜けたものになり、好奇心が刺激されるのか、多くの方がその時期に集中する。金額に縛りがあるから全員にという訳には行かないが、僕の薬局の場合、漢方薬を飲まれる方が多いし、天然薬ファンも多いからかなりの確率でくじを引く権利を有する。
 残り物に福も時にあり、8月のくじ引き最終日の今日、3等が当たった親子がハイタッチをして喜んだ。ある有名なメーカーのお菓子で、その親子は名前を知っていて、だからこそ価値が分かって喜んでくれたのだと思う。勿論僕は全く知らない会社のものだったが。
 今までのくじ引きの歴史で、ハイタッチをして喜んでくれた光景を見たことはない。それもハイタッチをして喜んでくれた母娘が、まさかこの人たちがと言う人だったので驚いたし嬉しかった。
 牛窓にいつ引っ越して来られたのかは分からないが、1年くらい前から僕の薬局を頻繁に利用してくれるようになった。家族一同品性と教養がにじみ出ていて、仕事先や肩書を聞いてなるほどと頷ける。誰でもが知っている会社のそれもえらい人。家族中で外国で長い間暮らしていたみたいで、偶然零れた話の内容でそれを知る。
 お金持ちは沢山いるだろう。品格を備えたお家もたくさんあるだろう。そのどちらも備えたお家もたくさんあるだろう。ただ残念ながら僕の周りにはほとんどいない。目撃する機会はほとんどなかった。田舎と言う土地柄、純朴さと品性を備えた人は結構おられるが、運よくそれに経済が伴っているかと言うとそうではない。だから今日の親子はそうした稀有な人なのだ。その稀有が演じたハイタッチが雲間から待ち望まれた陽が差した時のように周りの空気を明るくした。
 無意識の演技が一瞬僕の薬局を舞台にした。時に人間っていいなと思えることがある。「時に」が「いつも」に変わる舞台を提供したい。

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