遠慮

 毎月、月末の1週間はくじ引きで遊んでいただいている。あるお買い上げ金額以上の人が対象だが、僕の薬局は漢方薬とか、将来の健康に貢献する商品が多いから、くじ引きが出来る対象者は多い。毎月必ず消費するものはこの期間に皆さん来てくれるから、人が重なることも多い。
 昼過ぎにやってきた方の漢方薬を作っていると、その後の方も漢方薬が必要な人だった。ただ、先に来た方は持病の漢方薬だから日数が多くて、後に来た方のインフルエンザ予防薬の方が早くできてしまった。ただ薬局に入って来たのは明らかに逆だから、会計が先に住んだ人に妻が「先に入って来られた方に、くじを引いてもらってもいいですか?」と確認した。すると若い女性は「どうぞ、どうぞ」と言って、ベンチに退くようにして腰かけて待ってくれた。だから僕は先にひくことになった女性に「遠慮してよ。1等は当てないようにしてよ!」と念を押した。譲ってもらって恐縮気味の60代の女性は礼を言いながらくじを3回引いた。すると何とした偶然、1等を当ててしまった。実は先月も1等を当てた運のいい人なのだが、僕らスタッフも譲ってくれた若い女性も、もちろん本人も大笑いだった。そしてその時に素晴らしい光景を見た。譲った若い女性がとてもうれしそうな顔をして拍手をしていたのだ。
 「だから遠慮しろって言ったのに!」と僕も嬉しくて冗談の追い打ちをかけたが、とっさにその時の僕の脳裏に浮かんだのは「牛窓に帰ってきて薬局を継いでいてよかった」ってことだ。いまさらと思うが、こうした光景に出会うと、再認識する。
 先にひかせてもらった女性が帰った後、その若い女性が6回引いたが、3等が当たってとても喜んでくれた。くじで喜ぶと言う表現が使えるのは、実際にかなりいい景品だからだ。末等でも数百円するもの。1等だと1万円近いものもある。大の大人にくじを引いてもらってティッシュなんて屈辱を与えてはいけないから、自然派志向の娘が自分自身が欲しいものを景品にしている。だからみなさん結構楽しみにしてくれていて、どちらかと言うと暗い業種の薬局も明るく楽しい所に変身する。
 薬局の中で見ず知らずの人が一緒に盛り上がれる、田舎のハンディーがメリットに変わる瞬間だ。これがあるから僕もまだ現役でいることを許されているのかもしれない。

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