通知

 10月14日、漢方薬メーカーや生薬問屋に対して厚生労働省から通知が出た。「放射性物資に係わる漢方生薬製剤の取り扱いについて」というタイトルだ。概略は①放射性物質が検出された生薬を含む製剤について医薬品として製造販売を禁止②東日本大震災以降に指定された自治体から産出された漢方生薬製剤原料を使用した医薬品は自主的に回収して報告することの2点だ。当たり前と言えば当たり前だが、こんな当たり前のことが7ヶ月もたってから出されることを危惧する。この7ヶ月の間は許されていたことになるのだから。賢い人間だったら、出来るだけ早く売ってしまおうと考えて事実そうしたはずだ。 運がいいのか悪いのか分からないが、僕が主として使っている漢方薬は台湾のものが中心だからほとんど気にしなくていいが、唯一十薬(ドクダミ)と言う和漢薬は日本産がいいと言われていたからそれにこだわっていたが、急遽外国産に変えた。安全安心を標榜していた日本のものが使えない屈辱感を今少しだけ農家の方と共有している。 さて皆さんも気になるだろう、指定された自治体とは何処か。大切なことだから、どこから何処までと言う表現でなく全て列挙する。青森、岩手、秋田、宮城、山形、福島、新潟、茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉、東京、神奈川、山梨、静岡、長野の1都16県なのだ。 ここで又一つ新たな疑問が皆さんも浮かぶだろう。人によっては一生口にしないもの、あるいは病弱な人でも毎日の食事に比べれば圧倒的に口にすることが少ない漢方薬を、これだけ「正しく制限」して、毎日口にして圧倒的な量を摂る食べ物や水に制限がされない不思議を。  せっかくというか珍しくと言うか、国が漢方薬にたいして正しい判断をしたのだから、食べ物や飲み物にも同じ基準を適用すべきだ。上に列挙した県のものを口にはさせてはならないと。その上でお百姓さんには一所懸命米や野菜を作ってもらい、漁師には一所懸命魚を獲ってもらい、工場には一所懸命ものを作ってもらい、それを今まで通りの値段で東電の社員や政治家、誘致した田舎の首長や議員に食べてもらえばいい。工場製品も買ってもらえばいい。絶対安全ですとだまし続けて、家庭や職場や地域を破壊した人達に買ってもらえばいい。想像を絶する利益を今まで得ているのだから、それを吐き出させればいい。  人の心理に上手くつけ込んだ風評被害なんて言葉に惑わされてはいけない。完全に実害なのだ。みすみす分かっていながら実害を被る必要はない。自分や家族を臆病に守ればいいのだ。かの地のものは口にしてはいけないと国の役人はちゃんと分かっている。だからこんな通知が出たのだ。漢方薬だけでなく全ての食べ物にたいして同じように周知させるべきだ。何ら戸惑うことなくかの地のものを買い物籠に入れる若い母親を見ていて、恐ろしささえ感じていたが、国は庶民には見えないところで上記のような通知をちゃっかり出しているのだ。  庶民が時に風上に立つ勇気を持たなければ。