便乗

「 私は先生のおかげで毎日普通に生活しています。やはり生理前とかには苦しい思いもしますが、乗り切れています。体だけではなくて心も先生に治してもらったので苦しい時も乗り切ることができているんだと思います。何かあっても先生がいるんだ!って思っているといつでも乗り越えられるんです。勝手にすみません・・・(笑)訪問介護でお伺いしているお婆さんが私に、あんたはかわいいな~って言って下さったんですよ。私に、かわいいですよ!そんなこと生まれて一度も言われたことないから、うれしかった。不細工とか馬鹿とか生まれてこなかったらよかったとかばかりだったから・・・。」    僕は漢方薬を作るとき、「ああ、この方に元気になってもらえれば、何千人、何万人の人を救うことが出来る」と思うことがある。色々な方のお世話をさせて頂いているから、その人が元気になった暁には職業的な能力を発揮して、僕とは全く異なる分野で沢山の方のお役に立ってもらえる。いつの頃からかこのことに気がついて、以来ずいぶんとその事を楽しみにしている。ある若いお医者さんには何十万にもの人を生涯で助けてもらえるし、ある先生には沢山の子供達を導いてもらえるし、ある漁師さんには、沢山の美味しい魚を食卓に届けてもらえるし、あるお百姓には、同じように新鮮な野菜を食卓に届けてもらえる。ずるいけれど僕は皆さんの能力に便乗して喜びを頂いている。  彼女もそうだ。ほとんど危ない領域で苦しんでいたのにずいぶんと元気になって頂いた。ただ撲はその危ない頃から彼女の魅力には気がついていた。苦しんでいるからこそ回復した暁の彼女の活躍にも期待をしていた。あの頃の経験を生かせば、多くのお年寄りを心からお世話してもらえる。誰一人老人のお世話などしたこともない僕に代わって、これから沢山の方をお世話してもらえる。苦労したからこそ、より身についた彼女のかわいさは本物だ。老人が本物の心ではにかみがちな彼女をかわいがらないはずがない。生まれてきて、生きてきて、生きていく。生まれてきてくれて有難うと僕も言うしご主人も言うしお子さんも言うし、まだ見ぬ老人達も言う。