塩化アルミニウム液

 僕も全く同じ薬を作って20年以上前から薬局に並べていたのだが、1年間に10本くらいしか売れなかった。それが今年は娘が作って、説明書もつけて化粧箱に入れたら、とたんに毎日のように売れている。別に宣伝しているわけではないのだが、調剤を待っている間に説明書を読んで勝手に帰りに1本買っていく。もうすでに繰り返し買いに来てくれている人もいる。 塩化アルミニウムのローションだから本来は殺菌消毒剤なのだが、使っている人のほとんどは脇や足の裏の汗止めと臭い消しだ。ワキガなんかは他に類を見ない効果だ。単に殺菌するだけなのだがこれが結構よく効く。薬局製剤と言って薬を製造する権利を許可されている薬局しか作れない代物だがマニアックな製品でそんなに普及はしていない。だけどやっぱりその道に精通している人もいて、僕の薬局で見つけて喜んだ人もいる。今までは通信販売で買っていたらしいが、同じくすりが半値で買えるからと喜んでいた。娘は原価から計算して650円頂いているみたいだが、よそではその倍くらいするらしい。どうしてそんな値段になるのか知らないが、都会は家賃などで費用がかさむのだろう。その点田舎は持ち家だし、仕事帰りに一杯もやらないし、原価は安くつく。まさか飲み屋の代金まで薬代には含められないだろう。  薬局をやっていると化粧品会社などが目をつけて取引を依頼してきたりする。僕は苦手な分野には手を出さないことにしているから、即座に断る。まさか僕が化粧品を売れないだろう。そんなことをしたらみんな驚いて帰ってしまう。薬とは言え制汗ローションすら苦手なくらいなのだから。やはりおじさん主体の薬局では、買う気もしないものもあるのだろう。そう言った意味では薬局のスタッフに若い女性がいることも大切なのだと認識する。  売る気もしないおじさんと、買う気もしないお客さんで、何で今までこの薬局はもっているのか不思議だが、苦手意識丸出しの商売っ気もたまにはいいのかもしれない。