魅力

 M&Aと言うと多分、企業間同士の合併?いやどちらかと言うと吸収かな。後者の方が正しそうだ。と言うのがこのところ頻繁に送られてくる資料がM&A絡みのものばかりだからだ。僕の薬局みたいに、医院の前にコバンザメのようにくっついている薬局でないところまで送られてくると言うことは、何も調べずに、軒並み薬局に案内を郵送しているのだろう。
 昨日の日曜日は有り余るほど時間があったので、ゆっくりと目を通してみた。以前だったらすぐに捨てているが、コロナのおかげで時間がつぶれるものなら何でも「いらっしゃ~い」だ。
 最近の薬業界の傾向と対策、僕らの受験期の赤本みたいなものだが、が小難しく書いていたが、分業初期のように、国の方針、医院から薬を薬局に移して、医院の薬でのもうけ過ぎを抑制しようとした時期によい目をした薬局に、これからは国の手厚い保護が期待できないから早めに大企業に身売りしたほうが高く売れますよと言う、なんとも勝ち逃げと言うかひき逃げを勧めているようなものだ。確かに薬剤師会も痔見ん党の集票マシンの一つだからいい目をしてきた薬局は多い。医師に気に入られれば多くの収益が転がり込んできた。患者ではなく如何に医師に気に入られるかが収益を左右した。
 それだけお世話になっていた薬局も、この先経営がシビアになると聞かせれると、医師の恩を裏切るのか結構誘いに乗って身売りしている。結構高値で買ってくれるらしくて、退職金代わりになるのだろう。変わり身の早さに驚かされるが、もともと漁夫の利でお医者さんの頑張りに依存していたのだから、感慨は浅いのだろう。
 さて、どうせ間違って僕の薬局にも毎度毎度送られてくるのだが、僕の薬局を買ってくれと言っても絶対に買ってはくれない。なぜなら濡れ手に粟ではなく、手が荒れるほど働かなればならないのだから、買う側にうまみは全くない。そのうえ漢方薬の比重がとても高いので、ほとんど跡を継げる人はいない。儲からない、わからないの二重苦が僕の薬局の特徴だ。だから逆を言うとコバンザメでないのに潰れない。良くも悪くも現代人には魅力がないだろう。