紙一重

 恐らく、この国の多くの家庭と紙一重だと思う。突出した相違などほとんどないだろう。父も母も、子供に多くを期待して経済が許す範囲の教育を受けさせ、成績に一喜一憂し、その後だいたいの線に落ちつき、収まるべきところに収まる。延々として繰り返されている光景ではあるけれど、その光景からはみ出るケースが散発するようになった。過剰な期待に押しつぶされそうになることを、挫折の経験が少ない人は理解できないだろう。もし親にそうした失敗体験が少なければ、子の挫折を理解することは難しい。生まれてきた時から不幸を背負っている人もいる。時代に翻弄された人もいる。過酷な入試制度が挫折の始まりだった人もいる。いずれにせよ、挫折を経験しないなんて幸運過ぎることは避けた方がよい。何故なら背負っても背負いきれない不幸を、いづれ背負い込むことになるから。神様はそんなに不公平ではない。いつか必ずどこかでつじつまを合わせられる。だからこそほとんどの人間は今の不幸をうらまず懸命に耐えて生きぬいているのだ。