行列

人生は謳歌するものであって欲しいが、苦行そのものの人も多い。笑顔がきれいな人が少ない。あふれ出る幸せにはお目にかかることは少ない。何を抱え、何を背負って生きているのか分からないが、物質的な豊かさを達成してもなお表情は硬くて暗い。富んでも富まなくても、同じ顔をしている。金で解決できる不幸も多いが、金が招く不幸はなお多い。経済も、友情も、自然もそこそこが丁度いいのだろうが、そこそこでは満足できないほど欲求は駆り立てられ、破壊や自滅が横行している。  ギラギラした太陽の下では生物は生きられない。程良く塵が舞い、雨が落ち、風が吹かなければならない。恵みは時として美しくもなく輝きもなく訪れるが、受け取る側が灼熱の太陽の下にいたり、極寒の氷の上にいては手を差し出すことは出来ない。悲しげな唄が軒先を徘徊して公園の公衆トイレの中に消えていく。人生を歌い上げるテノール歌手の声の響きは、舞台からは降りてこない。苦の後にもう苦が待機している。苦の向こうにも苦がいる。刹那の喜びではつじつまが合わないくらい苦が行列をしている。