ボレロ

 せっかくの志も、お腹ごときのために学校に行けないだけで諦めなければならないとしたら無念だろう。その無念をひとりで抱えて悩み苦しんでいる青年のなんと多いことか。縁あって、僕はその様な青年と知り合うが、善良な性格の人が多くて尚更胸が痛む。他者を攻めることも出来ず、自分のふがいなさばかりが突出する。愛すべき青年達を本当はもっともっと愛してあげれば良かったのに、家族の愛は届かなかったのだ。  ある社会人の女性が無事試験を受けることが出来た。報告のメールを読んだときは嬉しかったが、受けられるという確信もすでに得ていたから、先日の高校生ほどの喜びではなかった。もう一度人生を再構築しようとした彼女のうれし涙が見られれば僕は最高だ。(突然の受験だから今年は無理かな)何度も僕の前で流した涙は過去との決別の涙だ。克服した過去には葬送の曲を聴かそう。自分の足で開拓地に踏み込んだあなたには、ラヴェルボレロを聴かそう。華奢で可愛いあなたの今に似合うのは、徐々に迫力を増す単調だけれど力強いあの独特の旋律の繰り返しだ。あなたの明日は今日よりまだ強くなれる。失った青春を取り返すためにあなたの精神が進軍しているのだ。