冬吾

 今日、母が何を思ったか、僕がNHKの朝の連続ドラマ「純情きらり」に出てくる冬吾を演じている役者に似ているそうだ。年令が親と子供くらいに違うので、そもそも無理があるのだが、ひょっとしたら、僕の青春時代の様子と重ねているのかもしれない。青春前期を懸命に受験生になりきっていたが、途中から力尽きた。そこからは結構転落の危機を何度も経験した。転落しきらずになんとか人並みな人生を送っているが、それゆえに平凡で非生産的な人生だったと思っている。冬吾のようにひょうひょうと生きてみたかったが、結局は既製服の人生だった。自分の評価は難しい。謙虚であれと常に自戒しているが、自分の息子を冬吾に似ているなんて言う母親から生まれた人間だから、その自戒も怪しい。もっぱら高見盛似だと評判なのだが、その声は母には届いていない。