近所

 「Googleで調べたんですが、周りに何もないですね」
 そう、何もないのだ。後ろには小高い丘を控え、前には瀬戸内海が広がっている。ただ僕の薬局は100メートルくらい海と離れているから、直接海を眺めることはできないが、Googleで見てみたら、海がすぐそばまで迫っていることが分かるだろう。
 数ある薬局の中で、よりによってこんな僻地の薬局を見つけて、なおかつ選んでくれたことを話題にした時に、関東圏に住む女性が言った言葉だ。この恐るべし立地を帳消しにしてくれる閃きがあったらしいが、詳細は忘れた。
 過敏性腸症候群の診断を受けているらしいが、僕にはその診断名がしっくりこなかった。もっとも具体的な症状を教えてもらうと病院では当然その診断名がつきそうだが、それでもなお僕はしっくりこなかった。大腸検査までしていただいて、たかが薬剤師ごときが異論をはさむのは分不相応かもしれないが、「しっくりこんもんは、こんのじゃあ」
 また、病気や局所的な症状を見るのではなく体全体を観察し情報を集め、その情報を統合、分析し診断と証(弁証)を導き、それにのっとり処方を決める中医学の弁証論治も僕は出来ない。
 僕は内視鏡検査の結果と、その女性から頂いた多くの情報で煎じ薬を作り飲んでもらっている。初めて煎じ薬を郵送した特に、処方の意図を書いて同封したのだが、そこには一言「ケツノ穴が小さい人を大きくする薬」と書いておいた。まことに下品な言葉かもしれないが、僕の意図がこの言葉にすべて含まれている。
 日常でも「あいつはケツノ穴が小さい奴だな」と言う表現は使われる。肝っ玉が座っていないという意味だが、僕はその意味と肛門の痙攣をかけ言葉で表現した。この一見下品な言葉が腑に落ちたらしくて、まさに何十年ぶりかの自然なお通じを体感していただいている。
 周りに何もない過疎地の薬局で、下品な言葉遣いしかできない、理論も何もない薬局だが、現代医学の知見と本人の訴えをうまく組み合わせられれば、このようなヒットも珍しくない。
 今ではこの女性自身も、僕が放った言葉を自然に使ってくれている。下品でごめん。岡山弁でごめん。ハンサムでごめん。鈴鹿王子君のお母さんの実家と近所でごめん。

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