英検1級

 雨の夜、バイパスを走ってある所から帰宅していた女性。普段、通り慣れたところではない。僕が嘗て同じ恐怖感を味わったところで、その女性も同様の恐怖にかられた。僕は必死で目を見開き、何とか白線らしきものを見つけながらやっとのことで帰宅できたが、その女性は何度も休憩しながら倍以上の時間をかけて帰宅した。
 本来強迫性障害を持っていたが、その経験が止めを刺し、それ以来家事でも確認作業が増えて困っていた。
 2週間前には考えられないような笑顔でやって来たから、漢方薬が結構効いてくれたなと予想していたら、案の定、確認作業が減り、じっと家でしていたのが何かしたくなり、ユーチューブに合わせてヨガを始めたそうだ。また、長い間中断していた英検の勉強も始めたらしい。
 英検の勉強をすると言うのは珍しい。だから興味が沸いて英検?と確認した。するとすでに4級は持っているらしい。4級と言うのを聞いて優越感に浸った僕は即答で「僕は1級よ」と答えると彼女の眼の色が一瞬で変わった。「先生凄いんですね」とお世辞ではなく心の底から驚き、また尊敬の眼差しを送ってくれた。僕の仲間と言うか先輩にも後輩にも結構1級の人はいるので、そこまで特別視されるのはくすぐったい。「僕は6年生の時に取ったよ」と言うと、あまりのすごさにもう笑うしかないみたいだった。
 「僕らが子供の時は習いごとなんてそろばん以外なかったんよ。だからみんなそろばんを習った。そして県大会にも行ったよ。そして年に1回しか行けない岡山の百貨店の屋上で缶ジュース1本を飲むことが最高の楽しみじゃった」
 今なら毎日でも飲める缶ジュースが、60年前の少年には1年に一度の飲み物だったのだ。
 大笑いをした後、まじめな話題に戻り2週間で気持ちが積極的になり強迫性障害も自分の行動を縛る程度ではなくなったことを喜んでくれた。そして「先生には感謝しています。中身を煎じた後見てみたんですが、牡蠣の殻や草の根っこみたいなものも入っていましたね」と言うから、牡蠣の殻は漁協の広場に山積みにしているのを拾ってきた。薬草はドッグランで抜いて来た」と答えると、そろばん1級と同じくらい受けて大笑いした。
 もうどこから見ても強迫障害で悩んでいる人ではない。2週間後にまたどこまで回復が進んでいるか楽しみだ

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