庶民

 薬局に入ってくるなり戸惑ったみたいだ。目的の薬を探そうとしたのだろうが、棚に並んでいるのは、健康の基礎を作るものがほとんどで、パンシロンとかパブロンとか定番のものが一切ないのだから。
 そこで仕方なく男性は、「六君子湯」を目当てに来たと教えてくれた。六君子湯を何のために飲むのか尋ねたら、胃酸が上がってくるような不快感があると教えてくれた。いや、胃酸と言う言葉はその時点では出なかったかもしれない。漠然と胃の不快感を表現したような気もする。僕は逆流性食道炎かなと思ったので、胃酸が上がって来るかどうか、咳をするかどうかなど尋ねたがどちらもないみたいだ。そこで希望通り調剤室から医療用の六君子湯を持って来た。
 ここまでなら僕の存在価値がないので、六君子湯は間違いではないが、もっと正解に近い処方があることを伝えた。すると、現代薬の胃酸を止めるような薬は飲みたくないから来たと教えてくれた。その理由が何となく僕の考えと近かったので深堀しようとすると、職業がまさにそれ(医者)だったみたいで、僕が話す理由がなくなった。こうなれば、僕の薬局を選んでくださったお礼を込めて、お役に立てる処方があるからそれを作りましょうかと提案したら、「漢方薬のことは分からないので」と快諾してくれた。
 向こうもそれを避けていたように感じたので、100%お医者さんとは確認していないが、住所や名前を教えてくれることを避けられたので、苗字とどこの町かだけ尋ねて処方を記録した。温厚なご夫婦だったが帰られるときに、もう長くないからと自嘲気味に言われたので、僕は自分と重ね合わせてそれに速攻で同調した。ところがその後年齢が90歳だと教えてくれた。失言だとすぐに悟ったがもう遅い。ただ、とてもその年齢には見えなくて、僕が同じだと思ったのも許されるかもしれない。
 僕の所は超庶民の来るところだが、時にこのような方が来られて、慣れぬ「ですます」調になる。

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