もう何十年前か忘れたが、彼がダンシング・オールナイトと言う大ヒット曲を出して有名になった後だと思う。買い物に来て、その後喫茶店で会うことがあって話をした。
何を話したかほとんど忘れているが、ただ一つ忘れていないことがある。時々テレビなどで見かけた時に、ふとそのことを思い出し、結局今でもそのことだけは覚えている。
当時僕は薬局の階上を、友人のために喫茶店風にして新築した。外階段で２階に上がれるようにし、ライブが出来る行きつけの喫茶店を僕自身欲しかったし、彼は自身で歌っていたから曲りなりのライブハウスが出来たわけだ。当時僕も漢方薬に打ち込む前だったので、楽しければよかった。
まだ学生時代を引きずって生活していたから、図々しく彼に出演料を聞いてみた。汐待と言う喫茶店は、ライブハウスの末席を汚すくらいの規模だったが、あわよくばくらいのことは考えたのだろう。彼は答えずに「いくら位だと思う？」と、逆に質問してきた。そこで答えた数字に１００を掛けなければならないくらいの隔たりがあった。今なら大謝りするが、まだ若かった僕はおそらく「手が出んわ」くらいで済ましたのだと思う。世間知らずを学んだ出来事として、そこだけが記憶に鮮明に残っている。
エピソードを一つでも披露できる人がまた亡くなった。僕と同じ歳だったことはニュースで知った。その後インドの影響を受けて活動範囲を広げているようなことはマスコミを通して知る機会があったが、インド哲学も彼の寿命を延ばすことは出来なかったのだろうか。それともあの強い紫外線を受けて遺伝子が破壊されたのだろうか。
