第13回 さぬきの響音

 待ちに待っていた「さぬきの響音」に行ってきた。待ちに待った期間は二つある。コロナで中止になっていたから数年再開を待ち望んだ。これがひとつ。もう一つは、連休中の和気の藤祭りで偶然「和太鼓集団 響屋」の主催者の方に会って、「さぬきの響音」が開催されることを知り今日まで2か月間、指折り数えて待ったこと。
 よくこれだけ質の高いチームを集めてくれたってことにまず感謝だ。沢山のチームを集めると、聴いている側が気を遣わなければならないような場面がしばしばみられ、気が気ではない心理状態で演奏を聴かなければならないことがある。そのことを考えると今日の6チームは、圧倒的なパフォーマンスで、ただただ感動の連続だった。
 例えば、「和太鼓集団 夢幻の会」はジュニア中心だが、いつもながら大人顔負けの演奏をし、嘗て無邪気に飛び跳ねるように手振り鉦を操っていた子が成長して立派な打ち手になっているのを見るのも楽しかった。
 「女流和太鼓 響音」は、いったいこんなチームが隠れていたのかと正直驚いたし惜しい気がした。なぜなら、4人とも筋肉隆々ではなく、どちらかと言うとスリムな人なのに、出す音に男性と遜色はないと思うし、テクニックも素人から見れば完成されている。あのスリムさで大太鼓も取り入れ、あたかも男女の差、体格の差など考える必要がないことを証明しているようだった。今まで和太鼓では聞いたことがないリズムが新鮮だった。ぜひどんどん舞台に立ってほしい。あのレベルとすがすがしさに触れられるのなら四国など近いものだ。
 「和太鼓集団 響屋」の囃子?は会場がとても盛り上がった。声を出しての声援は遠慮してくださいとのことだったが、思わず連れて行ったベトナム人女性が大きな声を出していた。よくもこんなに若い人を集め、各々をハイレベルの太鼓打ちに育てたものだと感心する。プロの太鼓打ちを輩出するのもうなづける。
 仁尾竜翔太鼓は、舞台狭しと和太鼓博物館のごとく楽器を配置し、初めて目にしたものがあった。着実に文化を継承しているのだろうと思わせるほど、楽器の豊富さと堅実な演奏が伝わって来た。
 「善通寺龍神太鼓」はいつもながら硬派の演奏を聴かしてくれる。聴きながら背筋が伸びるし、日本人が本来持っていただろう質実剛健の文字が浮かんできそうだ。テレビに露出する軟弱な馬鹿タレントとまるで対極にある。だからもっともっと発表の場を増やしてほしい。
 「大野原龗王太鼓」は今日僕が一番聞きたかったチーム・・・・だったが、最初から最後まで完璧な演奏の連続だったから、当初の目的はすぐに捨て去り十分すぎるくらい楽しませていただいたが、さすがに最後の演奏が例の鬼が大太鼓の上に上り、一心不乱に長いばちで打つ姿には、何度見ても感動させられる。実は太鼓の技術も、曲の質の高さも揃った上でのパフォーマンスだから人々の心を打つのだと思う。それが証拠に、僕の前の席の男性や、僕の隣の女性たちも、曲の途中から手拍子の連続だった。自然に体で感激を表現しているのだと思う。どちらも僕より年上に見える人たちの気持ちを、あれだけつつましい聴き手を、昂ぶらせるのは実力以外何物でもない。いつ誰が作った曲なのか教えてもらいたい。
 2時間余り、粋な演出で演奏が途絶えることがなかった。どうしても和太鼓のコンサートは太鼓の配置換えで間が空いてしまうが、音を絶やすことなくチームが入れ替わり、2時間余りを密度の濃い時間に変えてくれた。アホをひな壇に並べ低級な言葉を吐かせるメディアが1年かけても、この2時間に匹敵する感動の時間を視聴者に与えることはできないだろう。
 聴き始めから脳裏によぎり、会場を去る時も又脳裏によぎったのは「来年もまた聴きたい」だった。来年に期待することなど、いやその繰り返しに期待することなど何もないから、もう来年はなくてもいいのだが、こんな素晴らしい至福の時間を与えてもらったら、人並みな希望も出てく

る。

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