良質

 変わったなあと思わず口から出た。僕が初めてベトナム人たちと付き合いだした頃には考えられなかった。完全に拒否されて、何か代替品がないか右往左往するところだった。
 今日は6人のベトナム人が、ドッグランの整備の手伝いをしてくれた。落ち葉の回収が残っていた所と、春になって草がすでに伸び始めている所が混在して、忙しい目に合わせてしまった。ただそういった作業の経験者ばかりだから、いつものように想像したよりはるかに手際よく片付けてくれた。
 来日してまだ1年たたない通訳が、ベトナムで刺身を食べたことがあり、日本でも食べてみたいと言っていたのを思い出し、今日のお礼は握りずしセットに決めていた。50貫くらい入ったセットを予約していたのだが、通訳以外が口にしてくれるのか不安だった。と言うのは、まずかの国の人は生の魚は口にしない。経験だと言って強引に勧めても、かたくなに拒否されるのが常だった。以来刺身は勿論、握りも勧めたことがないし、彼女たちがスーパーで買って刺身や握りを食べている光景を一度も見たことがない。
 まさかの時、いや案の定の時に備えて妻が天ぷらうどんを用意していた。天気が良くて暖かかったので、ドッグランの大きなテーブルを囲んでいざ大皿の握りセットを並べると、歓声が上がった。見栄えだけで盛り上がって、皿を抱えて各々が写真を撮っていたが、食べてくれるかどうかは別だ。
 写真が一巡した後、通訳が食べ方を教えていたが、恐る恐ると言うより好奇心一杯の表情でゆっくり全員が口に運んだ。すると、ほとんどの子が、いや全員が「ゴン」と嬉しそうな顔で言った。僕は無理をして言ってくれているのではとも思ったが、表情から本当に美味しいのだと確信できた。日本の誇る料理が受け入れられて、とても意外だった。通訳もびっくりして、帰りの車の中で「ひとりであんなにたくさんたべなければならないのかとしぱいした」と言っていた。
 20年前には想像もできなかった光景だが、僕が考えるに、熱帯に近い国で、冷蔵庫などない時代に生ものなど口にできたはずがない。それが経済成長とともに家庭にも冷蔵庫が普及し、冷たいものを口にする機会が増えたのだと思う。そういえば通訳は去年の夏これも初めての光景だったが、高松に行ったときに、ベトナム人初の冷やしうどんを注文した。
 20年前にふとしたきっかけで始まった交流だが、良質な体験とともに帰国してもらえれば十分だ。上質は無理だが、良質なら僕にも手が届く。

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