長寿

 げに恐ろしや。
 体を鍛えていたはずがとんでもないことになった方の話。丸でその筋とは縁のない僕は意外だった。
 緑内障漢方薬を服用していただいている人が今日薬を取りに来たから、よく歩いている?と、僕が多くの方にするのと同じ内容の声掛けをした。すると最近は首が痛くなって歩けていないと言った。僕より少し若くて体ががっちりして、その上スキンヘッドだから近寄りがたく、首が痛くて歩けないなんて、そんな情けない言葉を吐くようには見えない。啖呵を切れば似合いそうなのに、今にも担架で運ばれそうだ。
 そんな彼がどうして歩けないほど首を傷めたかと言うと、ダイエットのために過度な運動を続けてしまったためらしい。その結果、半年で20㎏体重を落とすことに成功し、おまけに糖尿まで治ったらしい。
 その努力のおつりが首なのだ。ジムに通って、単語が分からないから想像してもらうしかないが、ダンベルの逆のような機械、両手で引き下げるような機械で頑張っている時に、首でプチッと音がしたそうだ。頸椎が損傷したらしく、半年近く激痛と闘ったらしい。結果的にはかなり回復したらしいが、疲労がたまると古傷が痛むのか、歩いても首に響くような症状が出るらしい。
 過ぎたるは及ばざるが如し。体力に自信がある方だから、負荷のかけ過ぎなどもろともせず、回復を少しでも早めたかったのだろう。元気で体力がある方が陥りやすいトラブルだ。生来元気でない方は、気性も穏やかな方が多いから、急いてことを仕損じることなど少ないだろう。
 この仕事をしていてつくづく思うことがある。大病をするほどの元気がない方の長寿。うまくできている。

 

Tetsuo Saito - されど私の人生 (1971年) - YouTube