無常

 もう2,3年にはなると思うが、どうしても食べたかった食パンがある。
 岡山教会から、駅のほうに歩いていた時に、ある小さなお店の前に行列が出来ているのに遭遇した。城下から岡山駅までの岡山を代表する通りにあるのだが、極端に小さくて、白色の店舗に黒い字で店名が書かれているだけだった。ただ、ひょっとしたらそれは店名ではなく、商品の紹介だったかもしれない。と言うのは僕が記憶しているのは「高級パン」と言う文字だけだから。
 岡山で行列のできる店などあまり見たことがないので、それもパン屋さんだったので、歩くスピードを落として中を覗いてみた。あいまいな記憶で申し訳ないが、今思い出せる光景は、正面のカウンター、応対していた若い女性二人、紙の白い手提げバック、棚の上の少々の食パン。あまりに少ない数の食パンだったので、どこに陳列しているのだろうと探したような気がする。そしてどこで作っているのだろうと言う疑問も持った。
 正面が2間、奥行きが1間くらいだろうか。これもまたおぼろげな記憶でしかないが、店舗の中にお客さんが自由に入って行けば、身動きできなくなるくらいだから、行列も当然と言えば当然だ。
 城下から駅までは時々歩くコースだから、その後何度も店舗の前を通っている。ただし、その後すぐ行列を見なくなり、やがて、客が入っているのを見ることもなくなった。
 そして今日、やはり夕方5時前に店舗の前を通ったのだが、客はいなかった。いつか行列をしなくても買えるようになったら食べてみようと楽しみを残していたのに、結局は誰も食べなくなったパンになってしまい、興味を失った。確か800円したと思うが、結局は超高級なパンを味わうチャンスを逃した。あの行列の人達は今どうしているのだろう。常連さんにはなりえなかったのだろうか。
 本当に美味しかったのか、あるいは奇をてらったのか。食べてないから判断できないが、今日目の前を通り過ぎる時に頭に浮かんだ言葉は「栄枯盛衰」
 世の無常を感じるが、それこそが世の中なのだろう。誰も抗えない。

三浦瑠麗に対して「気にするな。売れ過ぎてるからやっかんでるだけだ」と田原総一朗。慰めの言葉にもならないピンボケ。引退しかない!元朝日新聞・記者佐藤章さんと一月万冊 - YouTube