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 50年前の体験で、安易な考察をすべきではないかもしれないが、これはあまりにもひどすぎる。多くの大学が、教育者ではなく、経営者によって運営、いや営業されていることがよくわかる。 
 おそらく6年間も私立の薬科大学に通えば、入学金や授業料で1000万円はかかるだろう。6年間の生活費もそのくらいかかるだろう。ひょっとしたら入学寄付金なども必要なもしれないから、留年などしてしまえば3000万円くらいはかかってしまうと思う。
 それだけのお金を覚悟して入学したはいいけれど、卒業できずに退学する学生のなんて多いこと。入学のハードルがどれほど低いのかがよくわかる。将来薬剤師国家試験に合格できない人でも、入学させればガッポガッポ儲かるのだろうから、金を出してくれる家の子なら合格させればいいだけの話だ。
 一時、クリニックの門前薬局が急激に増えたから、超薬剤師不足になった。卒業したての薬剤師に、大企業で長年勤めた人と同じくらいの給料を出していた。だから起業家が薬科大学をこれは儲かるとばかりに作ったのだろうが、もう今は飽和状態だ。かつてのようなバカみたいな給料はなくなり、他業種と比べて少しはましなレベルに落ちてきている。
 それでもなお幻想だけは生き延びているらしく、薬剤師になりたい子やならせたい親がいるのだろう。どう見ても無理な子までが、入学試験に合格してしまうものだから、下記のような文部科学省が発表したような結果になってしまった。
 50年前の話で恐縮だが、当時は私立の薬科大学など数少なかったから多くの人は公立の薬科大学や薬学部を目指した。僕が受験した中で、岐阜薬科大学は、国立1期校と2期校の狭間に入学試験があったから、全国から志願者が集まり競争倍率は34倍だった。願書を出す前から受かる気がしない倍率の高さだったが、運よく合格者の中から、医学部に合格した人や、嘗ての帝大の薬学部に合格していった人たちが抜けていってくれたおかげで僕でも合格できた。もっとも僕も国立の医学部と帝大の薬学部を受験して落ちた部類で、同じようなレベルの人達が岐阜薬科大学には集まっていた。ただし、それでも岐阜薬科にしか来れなかったと言う劣等感にさいなまれ続け、入学してからの生活ぶりは悲惨そのものだった。
 ただし、結構受験慣れしているからか、それでも国家試験は卒業後わずか2か月の独学でほとんどの人が合格した。私立大学みたいに、大学が国家試験のために何かをしてくれると言うことは一切なかった。勝手に過去問を買って勉強しただけだ。思えば大学に入って5年間で、初めてまじめに勉強した2か月だ、4年10か月は怠惰に時間を浪費していただけだから。
 僕は文部科学省の発表を見てオレオレ詐欺をすぐに思い浮かべた。大学による詐欺だ。どう見ても国家試験に合格できないような子まで入学させて、国からの補助を合法的にだまし取っているようにしか見えなかった。過去の経験が今の時代に役立つかどうかはわからないが、誰かが教えないと、多くの家庭が数千万円を捨てることになる。悔やんでも悔やみきれない捨ててしまう金額と時間を大切に。ある程度のレベルでないとその道には進まないほうが無難だ。失うものがあまりにも大きすぎるから。そして誰も補償などしてくれないから。

 

    文部科学省はこのほど、薬学部における就学状況および退学状況等の2022年度調査結果を報告した。文科省は、全6年制薬学部における標準修業年限内の国家試験合格率(ストレート合格率)の他、22年から退学状況等の調査を実施している。
 標準修業年限内で薬剤師国家試験に合格した割合、いわゆる「ストレート合格率」が低かったのは、姫路獨協⼤学(14.5%)、千葉科学大学(21.6%)、第一薬科大学(23.2%)、日本薬科大学(25.5%)と3割に満たない大学が4大学あることが明らかとなった。また、現在60ある私立大学のうち20大学で50%を下回っていた。
 同日、文科省は6年制課程における退学状況を公表。2016年度入学者において、退学の割合が最も高かったのは、千葉科学大学(42.2%)、日本薬科大学(40.7%)、医療創生大学(40.5%)、北陸大学(36.5%)、九州保健福祉大学(32.3%)で、5大学で30%を超えていることが明らかとなった。

 

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