実用品

 「実用品のほうが、よく売れるね!」と言われてピンとこなかったのは、勝手に僕が今までの会話や風貌で想像していたこととは違っていたからだ。
 まるで50年前の僕をそのまま老けさせたような人。僕から消えたものをそのまま残している人。そうした形容で、ほとんどを理解してもらえる世代は、今だだ健在で、ひつこくリタイアせずに生きている。リタイア出来ない経済状況か、リタイアと言う言葉をそもそも持っていない人たちか?
 もう数年前からある薬を定期的に取りに来る。不摂生さえしなければその薬もいらないだろうと思うが、健康も大事だが、不摂生の人生はもっと大切なのだろう。その分野には特に疎いから適切な言葉で表現できないが、装飾品を作って色々なイベントで売っている人と言うのが、僕が彼から得た印象で、勝手に決めつけて今まで接していた。
 昨日いつものように薬を取りに来た時に、高山にいる僕の先輩に話が及んだ。偶然彼もまた僕の先輩を知っていて、その不思議な縁もあり、なんとなく気が合う。そしてその会話の中で出た不思議な言葉が「実用品}だったのだ。
 「実用品?金属で何か装飾品を作っているんじゃないの?」と尋ねると、あくまで実用品にこだわった。「指輪や、ネックレスやボタンを作っているよ。スプーンも作っている」と答えるからまたしても僕は同じ質問をした。すると「指輪もネックレスもボタンも、毎日身に付けるものじゃない。実用品よな!」と僕に教えるように言った。
 なるほど、飾っておくのではなく、毎日身に付けているから実用品なんだ。ただ僕はそれにはついていけず、「飾りじゃん、そんなもの永久にせんわ!」と言いたかったが、そこはぐっと抑えた。彼の生計を支えているものに、細かい突込みは何ももたらさない。むしろ、日用品と言うものを一つとっても、人によって位置づけが異なるのだと言う教訓を得た。
 なるほど、装飾品など月の裏側かと言うほど縁遠い彼が作るはずもないし作れるはずもない。僕もおそらくそんなもの何も持っていないから、半世紀前の匂いがお互いを引き付けたのだと思う。いや、そんなに格好良いものではない。半世紀前の臭いだ。

 

【山本太郎】増税の決定がされました 本当は消費税も廃止に出来るし一律給付も出来るけど絶対にやらない岸田政権#山本太郎 #山本太郎切り抜き #れいわ新選組#消費税増税 - YouTube