匿名

 なかなか面白い本音が書かれていて、匿名だから言えることだよなと、感心する。ほとんど納得だが、C彦の言う、『「脂質異常症や高血圧、糖尿病など慢性の生活習慣病の患者を診ると、医療機関側は『特定疾患療養管理料』が受け取れます。たとえば、少しコレステロール値が高い女性がいたとする。既往歴も家族歴もなく、薬をのむほどでもないのに、病名をつけて薬を出し、定期的に通院してもらえば管理料がもらえるから、処方してしまうというわけです」』に関しては特にうなづける。
 と言うのは、コレステロール中性脂肪が高い人ほど元気なのを経験的によく見ているからだ。活力にみなぎっているのは容易に想像できるが、癌などにも意外とかかりにくい。ある時まで元気いっぱいで、あっという間に患わずに逝く人が多い。いかにも幸運だと思うが、この幸運を回避するためにいかに多くの人たちが薬を飲まされていることか。確かに死ににくいかもしれないが、健康的な生活を送ることに関してはほとんど貢献できていないのではないか。病院の財布の中身だけが健康になりそうだ。
 D美の調剤薬局から期限切れが近いからこの薬を使ってくださいという要望は、時々聞く話で、僕らみたいにどの病院にも属していない薬局など、年間で期限切れで捨てる薬がいっぱいで、リポビタンなら頑張って飲むが、飲んだら死にそうな薬に限って余るのだからどうしようもない。
 C彦の心療内科や精神科は今とても忙しくて、5分の診察時間内では・・・にも驚いた。あれだけ苦しんでいるのに5分?5分でどのくらい自分の病態を医師に説明できるのだろう。お医者さんはパソコンの画面ばかり見ていてこちらを向かないと時々教えてくれるが、なるほど5分以内だとパソコンを打つので必至だろう。自動販売機で心を治してくれと言っているようなものだ。
 同情するのはB子の「いきなりボイスレコーダーを回されたりする」だ。医者は診察を拒否できないだろうが、薬局には簡単な断り文句がある。「僕の実力では治せません。効かない薬でお金を頂くことなんかできません」
 こんな時は医者でなくてよかったと思う。いやいやそんなに偉そうなことは言えない。正しくは「医学部を落ちていてよかった」だ。

 

 

「評判、経営上の理由、在庫処分…「自分ではのまない薬」を医師が処方する理由

「では、今日のぶん出しておきますね」。そう言って手渡された薬を、処方した医師本人はのんだことがない——そんな事実を知ったら、患者はどう思うだろうか。匿名の現役医師だからこそ話せる「私たちがのまない薬とその理由」。彼らはなぜ、効果が見込めなかったり副作用が大きかったりする薬を処方するのか。現役医師が告白する。
【座談会に参加した現役医師たち】
A男(50才)内科クリニックを開業
B子(42才)総合病院の内科勤務
C彦(54才)心療内科・精神科クリニックを開業
D美(49才)総合病院の整形外科勤務

A男「開業医の立場で言うと、大きな理由は“評判”です。以前、風邪で来院した患者さんが抗生物質を出してほしいというので『ウイルス感染の風邪には効かないし、耐性菌を生む危険性もあるから』と断ったところ、ネットのクチコミにひどいことを書かれたことがありました。もちろん、うちの病院は患者さんにできる限りきちんと説明して処方しますが、知り合いの開業医は『評判を落としたくないから求められるまま出している』と言っていました……」
C彦「経営的な理由で薬を出す場合も、正直あります。脂質異常症や高血圧、糖尿病など慢性の生活習慣病の患者を診ると、医療機関側は『特定疾患療養管理料』が受け取れます。たとえば、少しコレステロール値が高い女性がいたとする。既往歴も家族歴もなく、薬をのむほどでもないのに、病名をつけて薬を出し、定期的に通院してもらえば管理料がもらえるから、処方してしまうというわけです」
D美「薬も口に入るものだから食べ物と同様、使用期限があるため “在庫処分”という理由も実は存在する。薬剤師さんから『この薬の使用期限が切れそうだから、できれば使って』と言われることも」
A男「特に生活習慣病の薬や向精神薬は類似した薬がさまざまな製薬会社からたくさん出ているため『この薬でないと治療できない』というケースは少ないですよね。そんなときにどう選ぶかといえば『うちの新薬を使ってくれませんか?』と声をかけてくる製薬会社の営業さんとの関係で処方する薬を決める場合もあります。研究費をあの製薬会社からもらっているから、類似の薬はあるけれど、この薬を優先的に使おう、という思考も働きがちです」
C彦「“患者ファースト”とはほど遠い状況ですよね……。それに、一度処方した薬は患者さんから苦情や要望がない限りずっと使い続けるケースは多い。特に精神科や心療内科はいま、本当に混んでいて、初診でない限り一人ひとりにじっくり話を聞くことは難しい。5分の診察では薬を変えましょうと提案するのはハードルが高い面もある」
医師の家族だったらどうする?
 医師もひとりの人間であり、病院も先立つものがなければ立ち行かない。彼らの事情は充分に理解できるが、かといって「医師がのまない薬」を処方され続けるのは御免こうむりたいもの。どう働きかければ避けられるのだろうか。
B子「やはり単刀直入に聞くのがいちばんいいんじゃないでしょうか。聞きづらい空気があるのはわかりますが、『なぜこの薬を?』とストレートに聞くべき。それで不機嫌になるようなら、医師を変えた方がいいでしょう。また、なるべくならその病気の専門医に診てもらった方がいい。薬の知識も期待できます」
D美「『先生の家族だったら、この薬をのませますか?』と投げかけてみるのもアリ」
C彦「その聞き方はいいですね。そのとき、薬のデメリットも隠さず、どんな効果を狙って処方しているのかなどを含めて説明してくれる医師は信頼できますね。ただ、聞くときに上からの物言いではなくマイルドにしてほしいな、とは思います(笑い)」
D美「医師も人間だから、患者の態度やコミュニケーションの取り方で対応はどうしても変わってきてしまいます」
B子「たしかに、最初からけんか腰で来られたり、いきなりボイスレコーダーを回されたりすると本音を言いづらいし、警戒しちゃいます。逆に、信頼関係ができた患者さんには、細かく配慮したくなる」
 まさか、こんな裏事情があったとは—無論、のむべき薬をはなから否定して病状を悪化させるのは困りものだが、「医師が処方する薬だから大丈夫」と信じ切るのも大問題。違和感があれば、薬のセカンドオピニオンを考えた方が賢明だろう。
※女性セブン2022年2月17・24日号

 

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